無題
一同が目を覚ましたその場所は、
壁のあちらこちらに金銀を侍らせ、赤いテーブルクロスの上には
豪華な料理がずらりと並べられていた。
「ぅお〜すげぇ!待った甲斐があったぜ〜!」
不機嫌だった竜一はすっかり気分が良くなった。
そして窓側に掛かっているボードには
゛料理は食べていてくれたまえ。パーティーの詳細は後ほど話す。゛
と表示が出ていた。
「では早速いただきますか。」
と望月が言う。
バスの中の事などすっかり忘れ、一同は料理をぱくつく。
しかし、
「…?」
小林だけは違った。彼は何度も藤堂に招待されていたのだ。
藤堂がパーティーのはじめに姿を現さなかった日はない。
何かがおかしいと勘づいていた。
その時、部屋の扉が開く。藤堂グループの御曹司、藤堂護だ。
「やあ諸君。長旅ご苦労であった。これより藤堂グループ特別パーティーを行う。」
全員が拍手と、「お〜!」という声をあげた。
「で、随分待たされましたし、今回はいつもと様子が違いますね。
なにやら企んでいるのではないんですか?じゃなければ早く説明をお願いします。」
小林が落ち着いた口調で言った。
「では、パーティーの詳細を説明させてもらうよ。
今から全員に殺し合いをしてもらう。」
部屋の中が冷たい空気になったが、その時速水が立ち上がった。
「ふざけんじゃねえぞ!殺し合いなんてできるかよ!」
「おや、穏やかではないね。僕はいつでも君たちを殺すことができるんだよ?
僕に逆らわない方がいいと思うけどなぁ。」
しかし、辺りに凶器となりうる物も、凶器を持っている人も何もなかった。
速水はその事を分かっていた。自慢のキックがあれば藤堂を倒せると思っていたのだ。
そして感情を抑えきれず、
「できるもんならやってみなよ、このチキン野郎!」
と言ってしまったのだ。
沢口が止めに入るがもう遅かった。
「…言ってしまったね。では、景気づけに死んでもらおうか!」
藤堂がそう言うと、
速水はいきなり倒れ込み、悶絶し始めた!数秒後
「ちく…しょ…」
との言葉を最後に、速水の身体は動かなくなった。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
数々のメンバーが悲鳴をあげる。
「だから忠告したのに。まったくバカな人だね。」
藤堂が速水を嘲り笑う。
「実はみんなが眠っている間に超小型の
゛藤堂グループ特注毒放出機゛
を体に埋め込んでおいたんだ。僕がこのスイッチを押せばいつでも毒を放出する。
僕に逆らうのは自殺行為だよ?これで状況は把握できたね。」
全員に緊張が走る。
夢ではない。既に一人が死んだのだ。
落ち着いていられる者などいなかった。
【速水武士 死亡】
【残り18人】
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