とくに正義でも悪でもないただの改造人間の休憩
煙草を吸った。やけに苦くて不味かった。
風が吹いていないから煙がまっすぐ上へと登って行って、魂が登ってるみたいだとロギイは思った。
改造人間だって感傷にくらい浸る。
「あ゛ー、まじぃ」
煙草は捨てた。なんで吸おうとしたのかすらよく分からなかった。
まったくよく分からないことだらけだ。殺されかけたり我慢比べしたり犬と幼女に懐かれたり、
殺し合いに巻き込まれてまた殺されかけたりハレンチなロボになつかれたり先に死なれたり。
なんだってんだ。
ほんとになんだってんだ、どうしろってんだ。
「ねぇ……アンタもさ。埋葬されたほうが嬉しかったりする?」
どうにも「なにもしていない」という状況が辛かったのかもしれないと死体に話しかけながらロギイは思った。
死体といっても人間の死体ではなくロボットの死体で、
しかも死因はバッテリー切れだった。安らかな顔すぎて少しムカつくくらいでもある。
後に残されるヒトの事を考えて欲しいものだった。
こんなやりきれない気持ちは何度味わうものでもないだろうに。
ロギイの人生にはずいぶんと、ずいぶんとこういう気分の日が多いような気がする。
あー、またムカついてきたこの感じ。
なにも考えずに壁でも殴りたい、この感じだ。
この感じが嫌いなんだ。
(ロギイサン!眉間にしわをよせるのはよくないデスよ!)
ほらこういう回想の顔が出てくるだろこういうとき。
あんなおてんばで口を開けばエロい話ばかりで、でも恥ずかしがり屋で?男の理想のパーツを詰め込んで?
自分でも恥ずかしがってんのにさあ、そういうふうに造られたことに、誇りをもってんの。
そういうやつだったのに、だったからか、回想でもこう、笑顔なんだよなあ。
(ロギイさんはどういう用途で作られたんデスか?)
「いや、俺、人間」
(そうなんデスか!?失礼しまシタ! でも確かにロボットならエロに弱いはずデスしね……?)
「それロボも人間も関係ないやつでしょ」
……あー。
(ロギイサン)
「何」
(ロギイサンはもっともっと、自分に自信をもって、いいと思いマス)
なんなんだよ、長えんだよ、回想さあ。
いやもう結局、
やっぱりこんな催しを開いたやつが悪いんだよな、と、ロギイは単純にそれだけ考えることにした。
おっぱい枕から起き上がる。
おっぱい枕から起き上がって主催を倒しに行くのって随分カッコ悪いなと思った。
まあ、そのくらいでいいか。
俺はそのくらい、カッコ悪くてもさ。
(どれだけ改造されててモ……どれだけ自分があやふやデモ。いまココに、ロギイサンは生きてるんですから)
「ん。そうそう」
(だから、)
「分かってるって」
やればいいんだろ、やれば。
――改造人間は後ろを振り返らず、飛び上がった。
【右下エリア/1日目/真昼】
【ロギイ@改造人間ロギイ】
[状態]改造人間
[所持]おっぱいミサイル×4
[思考]やるか
前話
目次
次話