剣士と策士と狂戦士
剣を、抜く。
女性の身長ほどもある大振りな剣だったが
抜いてみると、思ったよりも軽い事に気付いた。
研ぎすまされた黒の刃は陽光を受け、虹の様に刃の色を変化させる。
なんとなく普通の剣じゃないと青年の直感が告げるが
それ以上の事はよく分からないので、とりあえずは放っておく。
「ま、普通に使う分にはたぶん大丈夫だよな」
青年――ガウリイは能天気にそう呟き、虹の光沢を持つ剣を鞘へと収めた。
あの後、気が付くと彼は一人でこの森の中に立っていた。
リナともはぐれ、腰のブラストソードも失い、
どうしようかとしばらく呆然としていたのだが
ザックの事を思い出し、とりあえず何か武器でもないかと中を漁って出てきたのがこの剣だった。
他にも理解不能な魔道具っぽいものもあったが、
クラゲ並みと定評のある彼の脳みそは、その使い方を考えようともしなかった。
「よし…行くか!」
一通りザックの中身を確認して、他に武器になりそうなものはないと判断すると
彼は剣を背負い、慎重な足取りで森の中を歩き出した。
むろんフィブリゾの言うふざけたゲームに乗る為ではない。
仲間――リナと合流するためだった。
とはいえ、別にあてがある訳でもなく、実は勘に従って適当に歩いているだけというのが
彼が「何にも考えてないクラゲ頭」と言われる由縁なのだが。
ともあれ彼はリナを信用していた。
まず間違いなく、このゲームを潰すために動いているだろう。
早く合流して…いや早く合流しなければ何やらかすか、わかったもんじゃない。
そう自称保護者らしくリナの無茶を心配して先を急いでいた
――そんな時だった
「大貫さん、話をっ―――!」
「ダーーーーーーイ(死ね)!!」
チェーンソーを振り上げる男に若い青年が襲われている――そんな光景に出くわしてしまったのは。
どうしようかと一瞬迷ったガウリイだが、彼はすぐに決断した。
ガウリイはすらりと剣を抜き放つと、男に向かって朗々と声をあげた。
「それぐらいにしておくんだな」
声に反応したのか、本能的にガウリイの強さを察したのかは判らないが
バーコード頭の男は血走った目でガウリイを睨むと、標的をガウリイに変え飛び掛ってきた。
「ダーーーーーーイ(死ね)!!」
「ここはオレに任せて逃げろ!」
ごぅっ!!
空気を引き裂き迫るチェーンソーをかわしながらガウリイが叫ぶ。
「ありがたい、感謝します。だが…」
青年が距離をとり、何か言いかけているのを横目にガウリイは男と斬り結ぶ。
ガリガリガリ!
「なっ…!?」
凄まじい勢いで削れていく剣を見て慌てて距離をとるガウリイ。
一合斬り結んだだけでこれだけ削れたのは何も武器のせいだけではなかった。
パワーといいスピードといい男のそれが人間離れをしていたせいだ。
時間をかければ剣が持たないと判断したガウリイは、
剣を腰だめに構え、カウンターを狙う。
攻撃と攻撃の隙間を見つけ必殺のタイミングで胴を断とうとしたその瞬間、青年が声を上げる。
「大貫氏――彼は恐怖の余りに錯乱しているだけです。
彼は我が校の大切な人材なので出来れば無傷で正気付かせて頂きたいのだが!」
「くっ、無傷でか!?」
ガウリイは咄嗟に剣を引き、代わりに蹴りを無防備な腹へと叩き込む!
どがっ!!
鋭い蹴りは見事に命中したのだが
男―――大貫はさして効いた様子も無くチェーンソーを振るってくる。
慌ててさがりながら、まるで丸太を蹴ったような感触にガウリイが叫ぶ。
「――なんとかやってみるが厳しいぞ!」
青年もすぐにそれを理解したのか辺りに何か使えるものがないかと見回し、そして気付いた。
木々の切れ目から尖塔が見えたのだ。
「ならば、あの塔へ!狭い場所ならばチェーンソーを振るえないはずです」
「――わかった!」
すかさずガウリイは足で地面を蹴り大貫の顔に土を飛ばす。
「―――!!」
どがっ!
土が目に入り一瞬怯んだその隙に接近したガウリイが足払いをかける。
バランスを崩しながらもやったらめったらとチェーンソーを振り回す大貫。
だが、ガウリイと青年はその間に遥か向こうに見える塔に向かって走りだしていた。
そしてしばらくして―――ゆったりと幽鬼のように立ち上がり、二人の後を追う大貫の姿があった。
「逃がさないヨ―――逃がしはしないヨ」
【F-7/森/一日目/朝】
【スレイヤーズ@ガウリイ】
[状態]:正常
[装備]:オーロラサークル@魔術士オーフェン
[道具]:支給品一式、ディメコム@それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ
[思考]
基本:リナと合流しこの殺し合いを止める
1:塔へ向かう
2:大貫を止める
3:仲間と合流する
[備考]:このオーロラサークルには再生能力があります。
刃こぼれや折れた程度ならかってに直ります。
【フルメタルパニック!@林水敦信】
[状態]:正常
[装備]:???(未確認)
[道具]:???(未確認)
[思考]
基本:とにかく大貫氏を正気に戻す
1:塔へ向かう
2:大貫を止める
3:知り合いと合流しゲームから脱出する
[備考]:アイテムはまだ確認していません。
次の人にお任せします。
【フルメタルパニック!@大貫善治】
[状態]:バーサーク(恐怖による錯乱)
[装備]:古びたチェーンソー@フルメタルパニック
[道具]:なし
[思考]
基本:ダーーーーイ!
1:ガウリイをダーイ!
2:林水をダーイ!
3:動くものをダーイ!
[備考]:チェーンソー以外は森(F-7)に置いてあります。
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