戦慄の三つ巴






「綾乃……」
使役する風の精霊からの報せを受け、八神和麻は足取りを遅くした。
音を立てぬように、相手に気取られぬように。精霊も問答無用で協力させ、できる限り己の気配を絶った。
そして、暫く進んだ先に、一つの人影が見えた。
体格は小柄。紙の色は黒く、肩の辺りで切り揃えられている。いかにもお嬢様っぽい外見だが、放つ気配の禍々しさは少女が油断のならない相手であることを如実に物語っていた。
そして、その足元に倒れている人影。それは明らかに神凪綾乃の変わり果てた姿だった。
「馬鹿が……」
小さく吐き捨て、視線の先にいる黒髪の少女を睨む。どう考えても、この少女が綾乃を殺したとしか思えない。
和麻は少女を睨んだまま動かなかった。何故なら、もう一人、この場に近づく人間がいることを精霊が報せたからである。
そして、草を掻き分けてその人物が現れた。
若い男だった。紙の色は黒くて短い。
男が声を張った。
「お前、人を殺したのか?」
若い男の視線は綾乃の死体に注がれていた。
黒髪の少女は微笑んで、
「ええ。私が殺しました」
楽しそうな声で答えた。
「何故?」
男の声がぐっと低くなった。
「楽しいから……きっと、私は殺し合いを望んでいたのです」
少女の笑みに不気味な影が差した。
男は頭を振り、溜息を吐いて構えた。ただし、奇妙なことに男は獲物を持っていない。まるで、徒競走をするかのような構えなのだ。
少女は微笑みながら、落ち着いた声で言った。
「せっかちですね。せめて名乗りぐらいはしませんか? 折角の戦いが盛り上がりませんわ。私の名前は白鳳院綾乃エリザベス。真剣勝負に飢えている者。とでも言いましょうか」
男はそれに答えずに地を蹴った。対する綾乃は動かない。構えすらしなかった。
「徒手空拳で戦うのですか。てっきり、武器を使うものだと思ってましたよ」
二人の距離が一秒足らずで縮まる。今、正に技の応酬が始まると思った瞬間、男が両手をわき腹の辺りで揃えた。まるで、剣を持つかのように。
「魔王剣(ルビーアイ・ブレード)!」
男が声を張り上げた瞬間、赤い輝きを持つ剣が突如表れた。
男が赤い剣を振り上げる。綾乃の表情に驚愕が浮かび、身体を捻った。しかし、体術の間合いから剣の間合いの外に逃げるのは無理があった。
「っぁあああああああ!」
綾乃の悲鳴が辺りに響いた。
右の肩口から血が吹き出ていた。綾乃の顔が激痛に歪むが、それでも状況を正確に判断し、後ろに跳び退った。大きな鎌を持って。
男は追撃しようとしたが、思わず足を止めた、片腕を切り落とされたというのに、綾乃の表情から苦痛が消え去ったためである。
その一瞬のためらいが綾乃を救った。アイルクローノの鎌で増幅された身体能力で一気に距離を開け、逃げ去ったのである。
男は舌打ちを残し、どこかへと歩き去った。続いて和麻も、事を見終えてから、急いで走り出した。
後に残されたのは、神凪綾乃の死体と白鳳院綾乃エリザベスの右腕だった。

【C-6/森/一日目/朝】

 【白鳳院綾乃エリザベス@それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ】
 [状態]:右腕損失。出血多量で体力低下。
 [装備]:アイルクローノの鎌、炎雷覇(体内にある。いつでも出せる)
 [道具]:なし。
 [思考]:
基本:夢の中で今までできなかった死合いを満喫する
1:体力を回復する
備考:支給品は慌てて逃げたためにその場に置きっ放しです。

【ルーク@スレイヤーズ】
[状態]:肉体的には健康。精神的には魔王の剣の副作用で疲労気味。
[装備]:特になし
[道具]:??(未確認)
[思考]
基本:殺し合いをどうにかして、フィブリゾをぶちのめす。
   1:リナやガウリィを探す。
   2:殺し合いに乗った奴は容赦しない

【八神和麻@風の聖痕】
[状態]:健康
[装備]:特になし
[道具]:??(未確認)
[思考]:
基本:参加者を皆殺し
1:白鳳院綾乃エリザベスに止めを刺す。



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