揺れ動く思考の中に






空を見上げた。

空にぽっかり満月が浮かんでいた。


「アタシは何をしてるの……」

一青窈(22番)は小柴山山中の古いバラック小屋の中のパイプ椅子に座り窓の外を見ながらその満月に問い掛けていた。

急に押し付けられた大きな課題…

未だその事実を理解しきれていなかった。


余りにも受け入れ難い現実にただ下を向いているしかなかった。

更に手には大きな黒い鉄の塊…

消音機にレーザーライトを搭載した代物…

ドイツH&K社製、US SOCOM採用銃、Mk-23
別名 SOCOM Pistol

全長245mm、重量1210gの45口径拳銃は華奢な一青には余りにも似合っていなかった。

(これでアタシに人を殺せって言うの!?)


「嫌っ!!!」

一青は手にしていたMk-23を投げ捨てた。
Mk-23が闇の中に消えた

「アタシは米軍の兵士でも特殊部隊の隊員でもないっ!!」

一青は白いスカートの裾を握り締めた。
目からは自ずと涙が流れてきた。


目の前に突き出された惨殺死体……

恐怖に顔面を蒼白にする男……

余りのショックに泣き出す女……

それを見て見下す様に嘲笑うデーモン小暮……

そこを逃げるようにして此処に辿り着いたアタシ……


アタシには何が出来るの?

アタシは今何をすべきなの?

誰か教えてよ……

ねぇ……

その小さな叫びは小柴山の騒めきの音によって掻き消されていった……

【22番 一青窈】
深夜:小柴山北東側山中山小屋内
[状態]:健康
[装備]:H&K Mk-23 SOCOM Pistol (消音機、レーザーライト、スコープ付き)、装填弾10発
[道具]:予備弾(25発)、支給品一式
[思考]:1.自分が何をすべきか教えて欲しい



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