前進
「……――なるほど。その人物達は信用できそうだな」
既にそれが顔の一部となってしまっている眉間に寄せた皺をほんの少しだけやわらげ、ゼンガーは恭介に言った。
ここは、A-4にある洞窟――ポエーン水晶洞窟。
洞窟の内部では、入り口から入り込んでくる月の光に照らされて、色とりどりの無数の水晶が輝いている。
互いの意思が主催を打倒する事だと感じとった両者は、情報を交換するためにひとまず落ち着ける場所へ移動をしたのだった。
地図を開き目に付いたポエーン洞窟に辿り着いた二人は、名簿を確認し、知り合いがいないかの確認を終えたばかりだった。
「はい。どちらも女性ですが――頼りになるでしょうね」
恭介がゼンガーに告げた名前は、水無月響子、春日野桜の二名。
「こちらも同じだ。もっとも、両者共に男ではあるが」
対するゼンガーが告げた名は、レーツェル・ファインシュメッカーとギリアム・イェーガーの二名。
ゼンガーの今の言葉を聞いて、恭介は訝しげな表情を彼に向けた。
「……あの、今のは冗談のつもりだったんですか?」
「…………」
ゼンガーは眉間に皺を寄せ、口を引き絞り押し黙った。
彼にしては本当に珍しい冗談だったのだが、ほとんど冗談になっていないのが彼の限界だった。
黙りこくってしまったゼンガーを恭介はチラリと見、
「――ところで、代えの服になるような支給品はありませんでしたか?」
当初からしようと思っていた質問をした。
恭介は、主催者の少年と自分が似通った白い学生服を着ている事を懸念していた。
幸いゼンガーは自分を信用してくれたが、このような恰好をしていては他の人間はどう考えるかがわからない。
むしろ、問答無用で攻撃してくるという可能性もありえるだろうと恭介は考えていた。
だが、自分の支給品の中には代わりの服になるような物は見当たらなかった。
なのでこうやってゼンガーに尋ねてみたのだった。
「――ふむ」
ゼンガーはそれを聞くと恭介の服装を上から下まで眺め、得心がいったとばかりに頷いた。
「待っていろ。今、残りの支給品の確認をする」
短くそう言ったゼンガーは、支給品が詰まったディ・パックを漁り始めた。
ちなみに、先ほど恭介から譲り受けたバスターソードは、ディ・パックから柄の部分だけを露出させるようにして収納されている。
流石に自らの身長とそう変わらない巨大な剣を持ち歩く事は効率的ではないし、それが移動の時に邪魔になったり体力の消耗を誘発させる事をゼンガーは承知していた。
なので、鞘の代わりにディ・パックを用いているという訳だ。
これならばすぐに取り出す事が可能だし、重量に悩まされる心配も無い。
ディ・パックを漁るゼンガーの手に、カサリとした乾いた感触が告げられた。
何かと思い取り出そうとしてみたゼンガーだが、最初の時点で強く握ってしまったためか、その支給品と思われるものは粉々に砕けていた。
ゼンガーは、ディ・パックから引き抜いた手に付着する砕けた枯れ葉の破片を不信そうに眺めた。
「……まさか、これが支給品だったというのか?」
さすがのゼンガーも、主催者のこの相手をおちょくる様な真似には少々苛立った。
だが、殺し合い――バトルロワイアルというものを開催するという人間だから無くはない、と思い直し再びディ・パックの中身を漁ろうとしたその時、
「ぜっ……ゼンガーさん……!?」
恭介が驚きの声をあげた。
「――どうした」
突然あがった驚きの声に、ゼンガーは何が起こったのかと全身に緊張の糸を張り巡らせ、周囲を見回した。
数多の戦場を駆け抜けてきたその姿は、まさしく武士益荒男と呼ぶに相応しい。
厳しい表情をしている頭部の頂点付近に丸い耳と、下半身に茶色と黒の縞模様の尻尾が付いていなければ、の話だが。
「……何があった、恭介?」
・ ・ ・
結論から言えば、ゼンガーに支給された品はスーパー木の葉というものだった。
だが、彼が握りつぶしてしまった事が使用のきっかけとなり――
「…………何か言いたいことがあるのなら言え」
「いえ……何もないですよ」
しかめっ面をした厳格そうな男が、タヌキのような耳と尻尾を得るという結果になってしまったのだ。
恭介は、ゼンガーの風貌や性格とあまりにかけ離れたその姿に最初は驚き、続いて笑いそうになった。
しかし、彼が自分のためを思ってディ・パックを漁った末の結果だと思い、なんとか自制したのだった。
その事をゼンガーもわかっているのか、恭介と出会った当初よりも――いや、彼の人生の中でもかなりの部類に入る程の険しい表情をしていた。
気を取り直すようにして、恭介はコホンと一つ咳払いをし、ゼンガーにこれからの方針を尋ねた。
「これからどう動くつもりですか?」
「会場を歩き回る――という訳にもいかんだろうな」
「……ええ。僕が主催者側の人間だと疑われる可能性がありますからね」
恭介はゼンガーの言葉に首肯し、言葉を続けた。
確かに主催者を打倒するための仲間を集めたくはあるが、恭介の服装などを考えたらその行動は危険を孕んでいる。
上着を脱げば良い、という単純なものではない。
どちらにせよ恭介の学生服のズボンは白いのだし、むしろ、上着を着ていないという事が原因で余計に疑われる可能性もあり得た。
関係者ではあるのだが、その証拠を隠滅しようとしていた……という、疑心暗鬼を生みかねないのだ。
かといって、動かなければならないというのも事実。
そこで恭介は――
「――単独行動は危険ではありますが、一度ここで分かれましょう」
現状で、最も効率的な案を出した。
これには最初はゼンガーも頷かなかったが、続く恭介の説得の言葉を聞いてなんとか納得した。
しかし、恭介を一人にさせるという不安もあるにはあった。
なにせ、彼は軍人でもなければ兵士でもない、ただの学生なのだから。
それを指摘された恭介は不敵に笑った後、
「大丈夫ですよ。……僕は――」
手からパチリと、目に見える程の電気を発生させてゼンガーに見せ付けた。
「――風紀委員ですから」
・ ・ ・
――僕と行動を共にするよりも、ゼンガーさんが単独で接触した方が相手の警戒は薄いでしょう。
――表情は硬いですが、それを補って余りある可愛さが……おっと、失礼。
――とにかく、接触をする場合は十分に注意してください。
――仲間を増やすための別行動なのに……“敵”にやられてもつまらないですから。
――それでは、ご武運を。
(……まさか、俺の見た目が警戒心を削ぐのに繋がる事態が起こるとは)
ゼンガーは頭部に生えた耳を軽く手で触れながら森の中を進んでいた。
あの後話し合った結果、恭介とは第一放送終了後、先ほどの場所――ポエーン水晶洞窟で落ち合う手筈になっている。
「…………」
夜の闇の中、ゼンガーはユラユラと尻尾を揺らしながら無言で歩を進めた。
【B-4・森/一日目/黎明】
【ゼンガー・ゾンボルト@スーパーロボット大戦OGs】
[状態]:健康、しっぽゼンガー
[装備]:バスターソード@ファイナルファンタジー7
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本方針:主催者をこの手で討つ。
1:主催者を打倒すべく、仲間を集める。
ゲームに乗った者には容赦はしない。
2:第一放送終了後、A-4ポエーン水晶洞窟に向かう。
※OGs第二部終了後からの参戦です
※広場での出来事と自身の経験から、偉出夫が平行世界へと干渉できるのではないかと推測しています
※恭介と情報交換を済ませました
※水無月響子、春日野桜を信用できる人物と認識しています
※どこに向かうかは次の書き手さんに任せます
※現在のゼンガーには、スーパー木の葉@マリオシリーズの効果で、大変可愛らしいタヌキの耳と尻尾が生えています
・尻尾で攻撃する事も可能です
・一定距離を走り加速する事で、短距離ならば飛行も可能になります
・尻尾をぱたつかせて下降速度が落ちるかは他の書き手さんに任せます
・この状態の解除に関しては、中程度のダメージを受けるというのを想定していますが、詳細は他の書き手さんに任せます
・ ・ ・
ゼンガーを見送った後、恭介はこれからの行動を決めかねていた。
先ほどゼンガーには、自分はここに残っていろと言われていたのだ。
それは勿論、一人で他の参加者に接触した時に懸念している事態が起こるという確率を下げるため。
だが、ゼンガーに単独行動という危険な真似をさせておいて、自分だけがその場に留まり帰りを待っているというのも……。
「…………」
恭介は己の掌を見つめ、拳を形作った。
しばしそれを眺めながら恭介は思考した。
「コンディションは問題ない、か」
ディ・パックの中には、ゼンガーからいざという時のためと渡された支給品が入っている。
――恭介は握っていた拳をゆっくりとほどき、その手でツイと眼鏡の位置を直した。
【A-4・ポエーン水晶洞窟/一日目/黎明】
【鑑恭介@私立ジャスティス学園シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、いのりの指輪@ドラゴンクエスト5、不明支給品1(確認済)
[思考]
基本方針:主催者をこの手で討つ。
1:主催者を打倒すべく、仲間を集める。
ゲームに乗った者には容赦はしない。
2:第一放送終了後、A-4ポエーン水晶洞窟に居る。
※私立ジャスティス学園終了後からの参戦です
※広場での出来事と魔法の存在、いのりの指輪の説明文から、偉出夫が平行世界へと干渉できるのではないかと推測しています。
※ゼンガーと情報交換を済ませました。
※レーツェル・ファインシュメッカー、ギリアム・イェーガーを信用できる人物と認識しています。
※恭介が移動するかどうかは、次の書き手さんに任せます。
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