とある少年のメモ〜Side:Ideo〜






今から僕は……いや私はこのゲームをプレイすることにする。
バトルロワイアルという名の一大ゲームだ。

まずは召喚だ。
ありとあらゆる種類の人間を、私が作り出したこの魔界に呼び寄せよう。
彼等は今から始まる愉快なゲームのコマだ。

舞台となる魔界は既に私好みの世界に作り上げている。
その昔大好きだったゲームのマップをそっくりそのまま世界へ投影させた。
正義の勇者が仲間を集めて、悪の魔王をやっつけるあのゲームのマップを。

幼い頃、私にとって唯一の友達だったゲーム。
「いつか、あの勇者みたいになりたい」
そんな思いを私に抱かせた、大切だったゲーム。

でもあんな物語は、ただのおとぎ話にしか過ぎなかった。
あのゲームの世界は所詮まやかしであり、現実にあんな温かい空想の世界なんかありはしなかった。

ハッピーエンドなんて存在しない。レベルアップなんて出来やしない。
毎日毎日、敵と闘って、傷ついて、死ぬまでずっとその繰り返しだ。
回復アイテムもなく、癒しの呪文もなく、復活の奇跡もなく、ただ死ぬのを待つだけの残酷な世界、それが現実だ。

幼い日の私は、正義の勇者としてあのゲームの世界で生ぬるい夢を見ていた。
今度は、悪の魔王となって、もう一度あのゲームを別の視点からプレイしてみたいと思う。
数多のゲームのコマ――命の灯――を用いて、人間の持つ生ぬるい幻想を打ち砕いてやる。
正義なんて人間の妄想と綺麗事で形成された幻だということを、人間に知らしめてやる。


そして――、

人間の絆の脆さを、

人間の心の醜さを、

人間の命の儚さを、


神となったこの私が証明してやろう。


この世に絶対に信じられるものなどないと、

この世に真実の愛などないと、

この世に希望などないと、

人であったこの私が教えてやろう。


さ あ 、 ゲ ー ム ス タ ー ト だ。



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