寒い時代だとは思わんかね?






彼は一念発起した。
このバイトロワイアルで優勝すれば、安定した社会的な地位を手に入れることができる。
そうすればあの過酷な環境の中に身を置くようなこともせずにすむのだ。
まっすぐ歩こうとするだけでも横風に吹き飛ばされてしまうような、あんな生き方など。
彼は、バイトロワイアルで最後の一人になるまで戦い抜くことを決意した。

そうと決まれば職探しだ。
彼のそばにはいくつもの求人誌が並び、色とりどりのページを晒している。
果たして手っ取り早く稼ぐにはどのような仕事がいいだろうか。
自分はどちらかというと不器用なほうだという自覚はある。事務系の仕事は厳しいだろう。
マニュアル通りにやれば問題なくできるファストフード系か?時給が平凡だな。
それなら深夜のコンビニなら時給もなかなかだし……いや、何かと物騒だし面倒な客が多そうだ。
彼は一息ついた。そうだ、やはり肉体労働系がいい。
自分は根気には自信がある。それこそ愚直といってもいいくらいだ。
これまでどんな逆境を前にしても、ただただ前に向かって進み続けてきた。
今さらどんな苦しい仕事だろうと弱音を吐いたりはしない。単純作業だろうと望むところだ。
それにガテン系なら環境はハードだが給金自体はいい。他の参加者を引き離すにはもってこいだ。
よし、そうと決まれば善は急げだ。
彼は決意を固め、意気揚々とページを覗きこんだ。



「……………………………………!!??」



さすがに21世紀になろうとも、イモムシを対象とした求人情報など載っているはずはなかった。
ニャッキは絶望した。



【ニャッキ@ニャッキ! 脱落】



前話   目次   次話