無題






 大海にぽつりと浮かぶ、小さな火山島・グーグー島。
 こんなところにもバイトロワイアルの招待状は届いていた。
「おい、ドコドン、わしらの時代がついにきたぞ!」
 こげ茶色のぼろきれ一枚はおったぎょろ目の男・ガルガリ博士が、緑色の髪をふりみだしてガッツポーズをしてみせる。
 だが、ドコドンと呼ばれたドラゴンはきわめて消極的だ。
「えー。おいら、戦いなんてきらーい」
「んなこというな、ほら、>>2をみてみ。こいつはな、他人との戦いじゃなくて、己との戦いなのよ。
 ありとあらゆる金稼ぎ! 額に汗するお仕事よ! われわれの得意分野じゃないか」
「でも、大変な仕事みたいだよ。ガルガリ博士はどんな仕事でもズルするじゃないか」
「大金持ちになるために、効率よく生きてんの。なぜそこんとこがわかんないかねえ、この島の住人たちは。でも……」
 と、ガルガリ博士は大空をはっしと睨みつけると宣言した。
「わしはやるよ。やってみせるよ。故郷に錦をかざってやろうじゃないの。わしの天才的頭脳で、おまえら全員見返してやろうじゃないの」
「全員って、わたしたちのことも入ってる?」
 その声にガルガリ博士が振り向くと、ピンク色のピコポン星人が招待状をひらひらさせていた。となりにはオレンジ色のピコポン星人もいる。
「やや、パッキー! それにムンム! なぜ招待状を持っておる! ……おい、ドコドン、二人には内緒にしておけと言ったではないか」
「パッキーちゃんに頼まれたら、おいら『いや』っていえないよお」
 全然反省のいろがみえない手下のドコドン。
 一方、なにかとガルガリ博士と張り合うことが多いパッキーは、自慢げに招待状の一文を指差して言った。
「はりきってるところ残念だけど、博士は参加できないわ」
「なぜ?」
「ここ、みてよ。」
「どれどれ…。『稼ぎが少ない順に次々と社会的な意味で脱落していく参加者……』……これが何か?」
「つまり参加者たちは、バイトロワイアルをはじめる前はきちんと社会生活をおくれていることになってるの」
「で?」
「博士、うそはつくし、人をだますし、物はぬすむしで、もうとっくに社会的な意味で脱落者よ。だから、博士は参加者になれないの」
「くううぅ。言ってくれるねパッキーめ」
「だって本当のことじゃない」
 博士はがっくりと砂浜にひざをついた。
「ああ、わしの夢は最初の一歩を踏み出す前についえたのか。わしの冒険の書は一文字目もかかれることなく地に埋もれていくのか」
 ドコドンが気の毒そうに声をかける。
「博士、日ごろの行いが悪いから、天罰がくだったんだよ。正しいことしてたら、きっといいことが起こるよ」
 その言葉に、博士はぴくりとまゆをあげた。
「正しいこと? でかした、ドコドン! わし、心いれかえる!」
「わーい、博士がついに真人間になる決心してくれて、おいらうれしいよ」
「ドコドン、なにバカなこと言ってんの。わしは1日だけ心をいれかえて、社会的に生きる。そしたら参加資格が手に入る。あとはいつものペースよ、ムフフフフ」
 あきれる島民たちをよそに、博士の薄気味悪い笑い声はいつまでもつづいた。

【ガルガリ博士@ピコピコポン】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]なし
[思考]
1:金を得るためなら、どんなに人をだましても構わない。
2:自分の頭脳は世界一

【ドコドン@ピコピコポン】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]なし
[思考]
1:のんびりしたいなー
2:パッキーちゃん、大好き!
3:博士のお手伝いしなくちゃなー

【パッキー@ピコピコポン】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]なし
[思考]
1:私ががんばんなきゃ
2:博士がずるしないよう見張っておく

【ムンム@ピコピコポン】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]なし
[思考]
1:パッキーの補佐。暴走しないようにブレーキかけなきゃ。
2:博士がずるしないよう見張っておく



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