餓狼、ひと吠え
「チッ……」
新撰組三番隊組長・斎藤一は、夜風に身を吹かせながら苛立たしげに舌打ちをした。
A-08に位置する駅でのことである。斎藤はつい今しがた目覚めたばかりであった。
一瞬、起きたばかりの斎藤は、何故自分がこんなところで寝ていたのか、皆目見当もつかなかった。
しかし後頭部に鈍い疼痛を感じるにあたり、次第に記憶が明瞭とし、事態を把握するに至っていた。
「殺し合えだと?」
吐き捨てるように言う。
今、斎藤の眼前には、岩倉具視の不敵な姿が見えている。
この国を憂いてこんなことをするのだと言っていたが、そんな奇麗事は斎藤にとってどうでもよかった。
殺すならまずこの男からだと、斎藤は思った。
ゆっくりと立ち上がる。
まだ頭がじりじりと脈打っていたるはずだが、それを気に掛ける様子は見られない。
傍らに置かれた風呂敷包みと、これは例のスネル兄弟とかいう武器商人が用意したであろう『サーベル』を拾い上げると、
それを腰に佩き、何処へともなく歩き出した。
「フン、阿呆が……」
ポツリと呟き、斎藤は己が姿を闇に隠した。
【A-08/駅/一日目深夜】
【斎藤一@新撰組】
[状態]:健康
[装備]:サーベル
[道具]:支給品一式
[思考・状況]1.岩倉を殺す
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