エイプリルフール・クライシス
「ハッ! ハハハ……面白い。幼女の肉に嗜みがあるのか。変態め」
ニタニタと頬を歪ませる目の男。その本質をエヴァンジェリンは考える。
青白い顔と、まっさらなスーツとズボンから見える肉には、筋力は備わっていない。
華奢な指。拳ダコも無い。日頃から鍛錬を積んでいるような――気の使い手とは考えにくい。
「あっ、あちゃー、違うんだっ。喰うってのはそーゆー意味じゃない。
あくまで物の例えというか……ごめんねードン引きさせちゃって。
言っとくけど俺はエッチでもないし、グルメでもないよ」
とってつけたような笑顔と挙動不審でごまかす男。その邂逅をエヴァンジェリンは思い出す。
鳥の死霊と戦闘中、自分はあの男の存在に気づいていたのか。おそらくは、半々だ。
薄々と感じる、己にかかる制約。おそらく神龍がこの世界に魔力の出力を抑える結界を張っている。
魔力を持つものならいざ知れず、魔力も持たぬ者の気配を察知することは容易か――とはいえない。
「まっあんたが普通じゃないの、こっちにはバレちゃってるからさっ。焦る気持ちはわかるけどねぇー」
エヴァンジェリンは表情を変えずに、心の中で笑う。
焦る? この私がお前のような魔力も気もろくに使えないような者に焦るとでもいうのか。
懺悔をするのはそちらのほうではないのか? 殺しをするつもりはないが、少しからかってやろうか。
自分が殺されるはずがない、と恐らくタカをくくっているだろうからな。
「そうだ。私は悪い魔法使いさ。お前達を皆殺しにしてやろうと考えている。ククッ」
この世界に飛ばされてから、おそらく一時間以上が経っている。
たった一時間。お前はいきなり悪い魔法使いに出会ってしまったんだ。
その不運を一番呪っているのは、お前ではないのか? ああっだめだっもう助からない、とな。
「え?俺は正義の魔法少女に見えたんだけど。絶対そうだよ。悪者だったらさっさと殺しちゃうよ。賭けてもいい」
「ハハハ……時間稼ぎのつもりか。その賭けは100回やろうが貴様の負けだ。私は優しい殺人鬼なのさ」
「絶対にあんたは正義の味方だよ。俺の命を賭けてもいい。あんた俺から色々と聞きたいんでしょ? 」
もちろんエヴァンジェリンには、男に対する殺意はない。
必要な情報を聞き出した後のことは、別段どうでもよかった。彼女は情報だけが知りたいのだ。
それゆえに、男の曖昧な態度に、少々ムキになっているのを彼女は理解していた。
(こいつは安い優越感に浸っているのだろうな。何かを知っているのは十中八九間違いない。
私が初対面で最初に襲わず“話しかけた”ことで……こいつは自分に用があると考えたか。
それは認めよう。だが、貴様がもやしっ子であることはわかっているぞ。ホイホイと認めるのは癪だ)
エヴァンジェリンは、事態の早急を優先した。
「ああそうだ。私はお前に聞きたいことがある。“オヤカタサマ”とやらにな」
「じゃあさ、1つ賭けをしようよ。賭郎勝負」
「ふん、いいだろう。私が勝ったら――なに? 」
「門倉さん、聞こえたよね。よろしくたのむよ」
飄々しながら、目の前の男は右耳につけていたインカムに話しかける。
なんだ? そのインカムは……怪しいとは思っていたが、まさか『支給品』とやらか!?
カケ……ロー、勝負!? この男は一体何を――
『ビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッビーッ』
男のインカムからブザー音が鳴る。
「ほらっ受け取りなよ」
男が左ポケットからもう1つのインカムをエヴァンジェリンに放り投げる。
それは男が右耳につけているのと、まったく同じタイプの物。
魔法も気も使えなさそうな相手からのアプローチに、エヴァンジェリンは警戒を緩めない。
受け取りはすれど、洗脳系の魔具の類と予想をつけて装着には至らなかった。
『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル様、お気持ちはわかりますが。インカムの装着をお願い致します』
「……! お前達は誰だ」
『賭郎です。今回の催しをお屋形様の元、取り仕切らせていただいております』
まさかのフレーズに、エヴァンジェリンはインカムを握り締める。
お屋形様。その一派が、なぜこんなことを!?
『エヴァンジェリン様が“お前達は誰だ”と仰いましたので、お答えさせていただきます。
我々――正式名称、“倶楽部賭郎”は賭け事勝負の立会いをさせていただく中立組織です。
賭けの内容及びルールの管理、報酬の確実な回収の調整等を迅速かつ滞りなく行います』
インカムから流れる声は、神龍でもオヤカタサマでもない。
昭和の香りを彷彿とさせるツッパリロックンロールな渋みがあった。
「このふざけた殺し合いも貴様たちが管理をしているというわけだな。名を名乗れ」
『私は一介の構成員――ただの立会人に過ぎません。それに本題はそこではありませんよ。
我々がこのような形でエヴァンジェリン様とコンタクトをとったのは、ほかでもありません。
このインカムがそこにいる斑目貘(まだらめ・ばく)様の支給品であるからです』
エヴァンジェリンはインカムと貘を交互に見ながら思案する。
この男は何を喋った? 勝負をしよう――私はそれに同意した。賭けてもいい――私は“いいだろう”と答えた。
まさか、それだけで? この言質をとっただけで? これがオヤカタサマの言っていたサプライズか?
『斑目獏様が知るオヤカタサマについての情報を、斑目貘から聞く。これがエヴァンジェリン様の報酬ですね?
エヴァンジェリン様は正義の味方に違いない、という主張を正当化させる。これが斑目貘の願いですね?』
「ちょ、ちょっと待て! 私はともかくアイツはそんなことを言ってないぞ!? 」
『言ったのですよ。あなたと出会う前に』
エヴァンジェリンは目まぐるしく変わる状況に困惑するしかなかった。
■ ■ ■
斑目獏 支給品 データ
・カリ梅×50個 酸っぱさが病みつきになる。カリッといける疲れ知らずの駄菓子。
・インカム×2 賭郎が立ち会う賭け勝負が行える。ただし以下の条件を満たさなければならない。
1.勝負をしたいときは、まず賭郎に対戦カードの希望を報告しなければならない。
2.賭けの報酬と取立てについては賭郎の立会人が判断し、認められれば勝負が開始される。
3.『勝負内容』及び『細かなルール』の取り決めに関する許可も賭郎の立会人が判断する。
ただし『勝負内容』のみ、優先権は先にインカムで連絡した側にある。
■ ■ ■
「……話はだいだいわかった。大した支給品だな」
「好意的みたいで助かるよエヴァ“ちゃん”。いやエヴァ“さん”かな? その姿も怪しいねー」
獏の嫌味をよそにエヴァンジェリンは考える。
ほぼ強制的に勝負をすることになってしまったこの状況。その恐ろしさに。
恐怖は、自分ではなく、獏に降り注いでいるのだと。
インカムの3つの令。その2と3の脆弱さ。圧倒的な暴力の前に潰されそうなルール。
(なるほど。こんな支給品をわざわざ出すということは、この男の支給品はこれで全て。
これほどリスキーに富んだ支給品をこの時点で使うのだ。こいつは望んでいる。自分を守る“剣”を!
何を企んでいるのかは知らんが、コイツは私が正義の味方であることを報酬に望んでいる。
つまり私は……こいつを助けてやらねばなくなる。フン、そんな報酬、私が後で破棄するかもしれんのにな。
第一私をあらかじめ最初に指名しておいて、もし問答無用に殺されでもしたら……ん!? )
エヴァンジェリンは獏に聞こえないよう、こっそりとインカムに連絡を告げる。
賭郎の立会人はその問いにそれとなく答え、無難に進行を促した。
「門倉さん、エヴァさんと話してるとこ悪いけどさ。そろそろ勝負したいなー俺」
『了解しました。エヴァンジェリン様、よろしいでしょうか』
エヴァンジェリンの本音は、獏の情報が知りたいだけ。
獏の挑発に苛立っただけで、彼を殺そうなどとは考えていない。だからこそこの勝負が成り立つ。
彼女は知りたいだけ。この男は一体何者なのか、その切っ先に触れてみたくなったのだ。
「いいだろう。勝負内容は? 」
「今から30分以内に、俺の半径2、3メートル以内に魔法使いが現れる。これでどう? 」
『YES、獏様、ルールの取り決めは?』
「こっちは命を賭けるって言っちゃったからねー。30分間、エヴァさんが俺に触れるのは禁止にしてほしいな」
『エヴァンジェリン様、いかがいたしましょう』
「……構わないさ。つまり私は30分間、お前によりつこうとする虫を払えばいい。このバイトは高くつくぞ」
エヴァンジェリンが魔方陣を召還させながら、高く上昇していく。
『それでは――賭郎・第拾陸(16)号立会人、この門倉雄大がつつがなく勝負を行うことを約束します』
――――『ゲーム名』 変則・陣取り鬼 〜魔法使い召還〜 ――――
――――『嘘喰い』 人間 斑目獏 VS 『闇の福音』 吸血鬼真祖 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル ――――
「あーなんだか今日はスイスイ上手くいっちゃう気がするね〜。なんというか凄く調子がいいんだ。
一年に一回ぐらいはさ、あるよね? “今日は俺の日だ!”みたいな……まぁ、みんな仲良くやろうよ。“みんな”」
■ ■ ■
(……斑目獏は私と出会う前に、私との勝負を門倉に申請していた)
エヴァンジェリンが門倉にした質問は、インカムルールその1について。
その質問とは『対戦相手の申請にはフルネームでなければならないのか』ということ。
この辺りの決まりが曖昧である場合、起こりえることは何か。
賭郎勝負に勝手に選ばれてしまう可能性が大きくなる、という点。
(あそこに見える女の子と勝負がしたい……なーんてほざいておいて勝負にいきなり持ち込まれる場合もあるからな)
これに対する門倉の答えは非常にクセのあるものだった。
『出来れば本人の了承の元、勝負を行うのが望ましいと言えば望ましいでしょう。
もっとも、一方にあまりにも不利が働く場合は、我々なりの“中立”の精神で対応すると思いますが』
(やすやすと信頼するのも嫌だが、門倉の性格を考えればその旨に触れるような話をするはず。
つまり、斑目獏は私の“本名”を知っていた。ではどうして知っていたのか……容易い話だ)
エヴァンジェリンが考える2つの可能性。
1つ、斑目獏はエヴァンジェリンの本名が記された情報を手に入れていた。
1つ、斑目獏はエヴァンジェリンの素性を知る人間……麻帆良関係者と接触していた。
あんな勝負を持ちかけてきたからには、斑目獏のところに魔法使いは絶対くる。
この短時間で計画を練り上げるならば、しっくり来る仮説は何か。
葛葉刀子――いや、信頼はしていないだろう。理性的で男運がないのを自覚している。接触するだろうか。
フェイト・アーウェルンクス――論外。口八丁な男を生かしておくとは思えない。
(おそらくは、ぼーやだろうな)
ネギ・スプリングフィールド――エヴァンジェリンの弟子。10歳の魔法先生である。
魔法使いであり、もちろんエヴァンジェリンのことも知っている。
彼は天才少年であったが、“坊や”と言われてしまうように、垢抜けていない。
斑目獏は口が立ちそうな男だ。純真な青少年はあっさりとやり込められてしまったのかもしれない。
(奴は偶然か知らずか……ぼーやと会い、おそらく待ち合わせをしたんだろう。そして斑目獏は私を見つけた。
私は情報をダシにされフッかけられた。私の天邪鬼っぷりを、ぼーやから聞いていたんだろう)
空に陣取るエヴァンジェリンは魔力探知に全てを注ぐ。
(さあぼーや、私の魔力の波長に気づけ! そして私を見つけるんだ! 一体何をしている!? )
エヴァンジェリンは心の中で叫び続ける。声を出してしまえば、新たな敵が近寄ってくるからだ。
そいつらを倒すことはわけないが、獏が殺されてしまえば、間接的にルール違反につながり、情報も聞けなくなる。
『エヴァンジェリン様、残り1分を切りました』
エヴァンジェリンは考える。
この異様なまでの――静寂さは何だというのか。違和感。違和感。違和感。
エヴァは吸血鬼の真祖であり、ネギとの実力差は計り知れないものだ。弟子の魔力探知を師匠ができないはずがない。
(……もしかして、私は重大な見落としをしているのか)
わずかな焦り。ルールを反芻してみる。
“俺の半径2、3メートル以内に魔法使いが現れる”“30分間、エヴァさんが俺に触れるのを禁止”
……少ない。あまりにも少ない。取り決めが少なすぎるのだ。
獏にネギが接近するのならば、エヴァとの衝突は避けられない。その待ち人に対する保護ルールが少ない。
そしてエヴァとの接触不可。これもおかしい。
彼女は氷の魔法をあれだけ獏に見せ付けていたはずなのに。遠距離からの魔法攻撃を禁止にしないのなぜなのか。
「――まさか! 」
エヴァンジェリンは視界を獏に戻す。
そこには――巨大な黒い球体の包まれつつある斑目獏の姿があった。
「させるか!! リク・ラク ラ・ラック ライラッ……!? 」
「やめたほうがいい。いくらそんな無駄な事で誤魔化そうと、あんたは――」
しかし……エヴァンジェリンは呪文の詠唱をそこでやめた。ゆるりと地面に下降し、斑目獏の元に戻った。
『現在、29分58秒経過、斑目獏様の元に新たな首輪の反応を確認。
反応したのは……あっ。こ、この勝負――――勝者は、斑目獏様です』
にやりと笑う獏と、ぼんやりとしながら立つネギ・スプリングフィールド。
やれやれとため息をつくエヴァンジェリンに、コホンと咳を出す門倉雄大。
4者4様の思いはあれど、勝負は決着。
「嘘つきだっ!」
■ ■ ■
「あ、師匠(マスター)! 無事だったんですね゛ぇっ!? 」
ネギの頭にエヴァンジェリンの拳骨が下る。ネギはそのまま地面に頭をぶつけてしまった。
「フン……まったく、貴様のせいでまんまと赤っ恥をかいてしまったではないか! 」
「いやいやエヴァさん、ネギちゃんは冴えてる。キモくもないし……むしろブラい。ブラ冴えてるね」
地面に突っ伏したままのネギの傍に落ちている弾丸のようなものを拾い上げ、獏が静かに笑う。
「まさか“時空転移弾”を奥の手にしていたとはな」
時空転移弾とは、ネギのクラス3ーAの生徒の、超鈴音(チャオ・リンシェン)と葉加瀬聡美の共同開発品である。
未来の魔法戦士である超と天才学者の葉加瀬は、触れた対象物を数時間後の未来に飛ばす弾丸を作ったのだ。
エヴァンジェリンはこの弾丸の存在を噂でしか聞いていなかった。
超の技術は未来世界の魔法を使ったもので、実際に触ってないエヴァンジェリンが思いつかないのは当然だった。
「斑目獏よ、詳しい種明かしをしてもらおうか」
エヴァンジェリンの敗北宣言を聞いた獏は、門倉に確認を取った後、全てを話した。
最初に獏はネギと遭遇し意気投合(笑)し、お互いの支給品を確認しあった。
そして麻帆良の情報と時空転移弾の話を聞いた獏は、ネギから時空転移弾を1つ受け取り――ネギにヒットさせたのだ。
エヴァンジェリンの戦闘に遭遇した獏は、エヴァンジェリンを発見。
あとは彼女をけしかけて、ネギが飛ばされた場所まで戻って勝負を始め――悠々と勝利する。
「ちょっと待て。何が意気投合だっ!! 大方、お前が美辞麗句を出してぼーやを騙し、情報を引き出したんだろう! 」
「エヴァさん、師匠っていうより姉みたいだね。ネギちゃんかわいいから、肩持ちたくなる気持ちわかるよっ」
「……ハッ。まさか、貴様がさっき言ってた“ブラい”のブラは……ブ、ラ、コ……」
「確かにネギちゃん身体鍛えてるみたいだしねー。俺の北斗神拳でも勝てるかどうか……まっでもさ」
獏は土に汚れたネギの服を両手で払いながら、ネギを立ち上がらせる。
そして、うるうると目に涙をにじませるネギに、落ちていた彼のメガネを渡した。
「師匠、僕も最初は疑っていましたけど、時空転移弾を提案したのは僕なんです。
超さん達の技術がこの世界でどう影響を受けているのか。そして獏さんに魔法の存在を信じてもらいたかった」
「エヴァさん、そろそろインカム返してね」
ネギの真剣な表情に、エヴァンジェリンはハッと我に返った。
ネギは獏に魔法使いであることをカミングアウトしているのに、ペナルティーであるオコジョ化を受けていない。
(この世界だからこそ……賭けてみたのか。ぼーやの癖に、生意気だ)
そして時空転移弾の効果は、着弾した場所の約二時間後の世界に飛ばされる、ということもわかった。
獏が命のギャンブルをしている間、ネギも命に関わるギャンブルをしていたのだ。
高みの見物をしていた己のように、遊び半分ではなかった。
「私の負けだ。私はたった今から優しい魔法使いになった。少なくとも斑目獏、お前にはな」
エヴァンジェリンはマントを翻すとすたすたと歩き始めた。
ネギも獏にぺこりと頭を下げながら、師匠に連られてその場を去った。
■ ■ ■
「師匠、いいんですか? 獏さんが心配です。あの人は……」
「フン、生まれつき身体が弱くてまともに運動もできないですぅ〜、とでも言うつもりか? 知ったことか」
エヴァンジェリンに見透かされたのか、ネギは目をぱちくりさせる。
(あのギャンブルでもっとも恐るべき問題点は、ぼーやの出現場所が違ったとき。
斑目獏は、ぼーやに嘘を吹き込んだんだろう。もし出現場所が違っていても自分を真っ直ぐに助けるように。
外道ではさいようだが、ぼーやの優しさに付け込み熱意を利用するしたたかさは、侮れないな)
「ぼーや、どうしてあの男を信頼したんだ? 」
「だってあの人は嘘喰いなんですよ。悪い奴らの嘘を食べてしまう、正義の味方なんです」
「嘘……喰い……? 」
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは嘘をついた。私は悪い魔法使いだ、と。
賭けに負けたエヴァンジェリンは良い魔法使いになりました? ご冗談を。
ならばエヴァンジェリンが善の塊のようなネギを弟子にとっているのはなぜ?
ネギはエヴァンジェリンの風評を尋ねられたら、こう答えるだろう。“師匠は本当はいい人なんです”。
「それに獏さん、くわしくは教えてくれませんでしたが、ある野望があるんですよ! それは何と――」
「…………嘘喰い。嘘喰い獏か、ク、ププ……」
本人がどう思えど、これで悪人とは……胸を晴れない。
エヴァンジェリンは知らず知らずの内に、もっとずっと前の段階で獏に見破られていたのだ。
そしてその嘘は利用され、まんまと喰べられてしまったのだ。
エヴァンジェリンは腹の底から可笑しな気分がこみ上げてくるのを感じた。
――う〜ん、“世界平和”かな?
「ぶはっ……あーはっはっはっはっ……」
【E-2 崖/一日目 黎明】
【名前】エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま!
【状態】全身に多少の擦り傷(自然治癒中)、魔力消費20%
【持ち物】三星球@ドラゴンボール、ディパック(基本支給品一式x2、不明ランダム支給品2〜5)
【思考】
1:現状、殺し合いに乗るつもりはない。邪魔者は排除。 嘘喰いに関わる者は助ける。
2:ネギとこのまま一緒に行動するかどうかは保留。
3:刀子との接触。フェイトは警戒。
※参戦時期は麻帆良祭(学園祭)終了後の参戦のようです。
【名前】ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!
【状態】頭にでっかいたんこぶ
【持ち物】時空転移弾×3、ディパック(基本支給品一式、不明ランダム支給品1〜2)
【思考】
1:現状、殺し合いに乗るつもりはない。 嘘喰いに関わる者は助ける。
2:エヴァンジェリンとこのまま一緒に行動するかは保留(貘のところに戻る?)。
3:刀子との接触。フェイトは警戒。
※参戦時期は麻帆良祭(学園祭)終了後の参戦のようです。
『時空転移弾』ネギま18〜20巻 参照
1.着弾した対象物を二時間後の同じ座標に飛ばす。
2.使用するのに、魔力および制限の関係で6時間につき1回しか使えない。
3.二時間後、禁止エリアになる座標で使用可能なのかは不明。
※獏をかなり誤解しています。いい意味で。
※獏の仲間の情報は聞いていません。獏がネギの情報を引き出すのに優先していたため。
■ ■ ■
カリっ カリっ カリカリっ……
嘘喰い貘がかじるカリ梅の音を拾いながら、立会人門倉雄大は考えていた。
―ー現在、29分58秒経過、斑目獏様の元に新たな首輪の反応を確認
――新たな首輪の反応を確認
――新たな首輪の反応
――新たな
(私としたことが……余計な一言を。あの一言で嘘喰いは確信したはずだ)
門倉の一言は、あの場にエヴァと獏以外の第三者が現れたこと。
そして確認できる余裕が賭郎にあったことを示している。
つまり賭郎は時空転移弾でネギが現れることも、我々は完全に把握していた。
それはネギ・スプリングフィールドたちが関与している魔法という技術も充分理解しているという事実。
(まあいい。魔法で出し抜くことが難しいという確証が、より強固になっただけの話。
この失態は失態だが……私の中の中立を裏切るものではない。ここからどうするかは嘘喰い次第なのだから)
「ね〜〜門倉さ〜〜ん。このインカムって常時つなぎっ放しなの? 」
門倉がはまる思考の渦から貘がアリアドネの糸を垂らす。
『……いえ、あくまで私は斑目様が勝負を希望したときのみ対応させていただきます。
何かありましたら、インカムについているスイッチを押してください。くれぐれも悪戯心で使わぬよう』
「わかってるよ。門倉さん、冗談通じないモンね〜〜ははっ」
貘の屈託のない語りに思わず噴出しながらも、門倉は通信を切った。
嘘喰い貘、次に血湧き踊る勝負を呼ぶのはいつか。
【E-2 崖/一日目 黎明】
【名前】斑目貘@嘘喰い
【状態】健康
【持ち物】かり梅@嘘喰いx48、ディパック(基本支給品一式)
【思考】
1:さ〜てどうするかねぇ〜〜 エヴァさんとネギちゃんのブラ(ブラコン)冴えに頼るのもいいけどさっ
2:この場を切り抜ける。 最終的に屋形越えを果たす。
3:マルコ、夜行との接触。
※最低でも廃鉱編終了後(7巻〜8巻)からの参戦。門倉と元々面識があったのかは不明。
※情報麻帆良の大まかな話と世界観。
及びネギ、エヴァ、刀子、フェイトの外見と触り程度の情報をネギからもらいました。
※マルコ、夜行の情報をネギに話さなかったのは、彼なりの保険です。
『インカム』
・インカム×2 賭郎が立ち会う賭け勝負が行える。ただし以下の条件を満たさなければならない。
1.勝負をしたいときは、まず賭郎に対戦カードの希望を報告しなければならない。
2.賭けの報酬と取立てについては賭郎の立会人が判断し、認められれば勝負が開始される。その時許可のブザーが鳴る。
3.『勝負内容』及び『細かなルール』の取り決めに関する許可も賭郎の立会人が判断する。
ただし『勝負内容』のみ、優先権は先にインカムで連絡した側にある。
立会人は賭郎 第拾陸(16)号 門倉雄大(嘘喰い10巻参照)
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