正義







日誌 ロールシャッハ記
20**年5月22日






 今朝、路地裏で犬の轢死体を見つけた。
 裂けた腹にはタイヤの跡がついていた。
 この街は俺を恐れている。
 素顔を覗いた俺を。




 この街の通りはドブ同然だ。
 人の血が溢れるドブだ。
 いつか下水道が溢れれば、クズどもは全員溺れ死ぬだろう。





 セックスと人殺しに耽ったあげく、己の罪に腹まで浸かった売春婦と政治家どもは天を見上げてこう叫ぶだろう。
 “助けてくれ!”……





 見下ろして俺はこう答える。







 “いやだね”


『問おう。君はこの状況にてどう行動する?』

訪ねる男はかなり奇妙だ。
警察官の服を着ていることから、警察所属なのだろうか。
それかそのコスプレをしているコスプレイヤーか。
おそらく後者に思える。
頭にパトランプの被り物をつけている警官がいるとは考えにくい。

「HURM……俺は俺の正義を貫かせてもらうだけだ――

――俺は絶対に妥協しない」

答える男もまた酷く奇妙だった。
常に蠢く黒と白の模様の覆面。そして酷い体臭。
この男の名はロールシャッハ。
本名はウォルターたが、名簿にはそう記載されているため、今後彼はロールシャッハと呼ばせてもらおう。
ロールシャッハはキーン条約により、ヒーロー活動が禁止された世界のアメリカにて非合法に活動する男。
悪党の殺害に一切の蝶々がない慈悲無き断罪者。

『……なるほど、わかった』

ロールシャッハと向かい合うパトランプは、どこか含みのある納得の言葉を発する。
見せしめにより名も知らぬ男を殺した主催の殺害を方針としていたロールシャッハ。先に接触を図ってきたのはパトランプの方だ。
こうして向かい合っているなか、ロールシャッハとパトランプは奇妙な感覚を抱いていた。
ひとえにそれは互いが似たような性質だったから生じたものだったのかもしれない。

『……私はある凶悪な犯罪者を探している。そいつを確保したい。
奴は恐らく、この殺し合いでも同じ罪を重ねるだろう。
見たところ君は対主催だろう?
正義のために、君の手を組みたい』

パトランプはロールシャッハに協力を申し出た。
正義のため……そこを強調する。

「なるほど、お前の事情はわかった。
だが手を組むにしてもひとつ聞かせろ。
その凶悪犯を捕まえたとして、どうするつもりだ?」

対するロールシャッハは、パトランプの気迫から、その犯罪者の確保が目的だとは容易に察せられた。
だが、その犯罪者を捕まえたとして、どうするかを訪ねる。

『……生死は問わないと、上から言われているんでね』

パトランプは暗に殺すつもりだとロールシャッハに告げた。
ロールシャッハが一般的な常識ゆえに対主催を志しているなら、この時点で同盟の目はかなり弱まるだろう。
だがそれは意味をなさない。


「わかった。同盟を組もう」


ロールシャッハは普通ではない。
ひどく独善的で、右翼主義者の、屑に厳しい゛精神的超人゛。
正直、もしもパトランプが殺害ではなく確保のみを視野にいれる男だったら、同盟を組もうとまでは考えなかった。
蝶々なく悪を殺せる男なら、自分と似たようなものだ。
ならばこそ信用に足りるかもしれない。


ここに正義と正義の一組の同盟が組まれた。

ロールシャッハは知らない。パトランプが追いかける凶悪犯が犯した犯罪が、『映画の不法盗撮』 だということを。
まあ、別に知っているからなんだって言う話なのだが……

【6―B街/一日目・深夜】

【ロールシャッハ@ウォッチメン】
【状態】健康
【装備】
【道具】基本支給品、不明支給品三つ
【思考】基本:絶対に妥協しない対主催
Ⅰ:パトランプ男と行動を共にする?
【備考】
コメディアン殺害前からの参戦

【パトランプ男@ゆるきゃら?】
【状態】健康
【装備】
【道具】基本支給品、不明支給品三つ
【思考】基本:対主催
映画泥棒(盗撮男)を確保する。状況によっては殺害?する
Ⅰ:ロールシャッハと行動を共にする
【備考】
特になし



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