無題
俺は木に寄りかかり懐からパイプを取り出し一本やった。
疲労困憊と言ったところか、己の無力さに呆れて一つため息が漏れた。
「おい、そこにいるのは誰だね?」
森の奥から人の声が聞こえた。
男は姿を悟られぬようにひっそりと声の方を覘き見た。
そこには髭を生やした中年の男がモップを手に辺りを警戒し立ち尽くしていた。
さて、どうしたものか。
俺はパイプの煙をぼうっと眺めていた。
私の声に対する応答は感じられなかった。
「私の気のせいか。」
そう思った矢先、前方でガサガサっと音がした。
注意を凝らして見つめていると、
一人の男がゆらりと歩み寄ってきた。
その男は西洋風の顔立ちで時代遅れの帽子を被っていた。
しかし、驚いた事にこの何もない戦場でその男は手ぶらだった。
私は、強くモップを握り締め流暢に言った。
「ふ、フーあ〜ユー?」
それと同時に男は唐突に飛び掛ってきた。
たじろぎながらも私は必死でモップを振り下ろした。
1回、2回、3回、微力ながらも確実にモップは命中した。
しかし、その男はひるまず蹴りかかってきたのだ。
だんだんと私の意識が遠のいていった。
そう、それが私の見た最後の景色だったのだ。
終
【シャーロックホームズ伯爵令嬢誘拐事件 ホームズ 生存】
【かまいたちの夜 シュプールオーナー小林二郎 死亡】
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