HAERT OF DARKNESS






「何を話しているんだ?」
玲二は物陰からじっと様子をうかがう、脱出路をふさがれているお陰で逃げることが出来ないのだ。
と、ケルヴァンと少年が握手をするのが見える、何らかの契約が成り立ったのだろう。
ケルヴァンが去っていく、そして少年たちはまたロボットに乗り込んでいき。
庭の方に移動していく、チャンス到来だ。
アフロの男はまだ気を失っているようだ・・近くにあったワイヤーでアフロを縛ると
玲二はそっと動きを開始した。

「ええとまず操縦方法は」
尊人は冥夜らにバルジャーノンの動かし方を教えていく、しかし冥夜にしてみれば
やや勝手が違うようだ。
「これは何だ?」
冥夜はコクピットの端のボタンを押す。
「ああそれはセンサーだよ、範囲は切り替え可能でこうやって狭めるとその分精度が高くなるんだ」
尊人は画面をてきぱきと切り替えていく、とその時画面に何かの動く影がくっきりと映ったのであった。

「そこで動いてるやつ!!」
そのアナウンスに直人はびくりと身を震わせる・・・ばれたか?
「俺じゃなかったらしいな・・・」
ふーっと直人は息を吐く。
ゲンハまでの距離はまだ遠い、しかしそれでも・・・ファントムの姿は見えない
それが逆に恐ろしかった、どこから狙われるのか?しかしそれでも直人は逃げなかった。


「俺のことか・・・」
玲二は仕方なく立ち止まる、確実に死角をついて逃げていたというのに。
チャンスはチャンスでもノーチャンスだったらしい。
さすがに巨大ロボには勝てない、そう判断した玲二は両手を掲げて彼らのもとへ向かった。

「何だと!!それじゃあんたが純夏を攫おうとしたってのか!!」
「ああ、結果的に巻き込む形になってすまなかったと思っている」
武器を奪われ後ろ手に縛られたまましれっと答える玲二。
「この・・・!」
武は玲二に殴りかかるが、いとも簡単に避けられ、しかもそのみぞおちに膝蹴りが炸裂した。
「何で反撃するんだ・・・」
咳き込みながらしゃがみこむ武。
「俺にも引けない、そうしなければならない理由があった、だからこれは50/50だ」
無表情で武に告げる玲二。
確かにその通りだった。
一方はケルヴァンに接近することで、そしてもう一方は敵対することで明日を掴み取ろうとしてたのだ。
「話の途中だったな、まぁ遺言と思って聞け」
まな板の鯉とはこのことだろうか?いずれやってくるその時がついに来たのかもしれないな・・・。
そう思いながら、玲二もまたこの島で遭遇した出来事を、
そしてミュラたちから伝え聞いたことを武たちに語っていった。

「なるほど・・・あんたの言い分はわかった、けどな!」
武がS&Wを玲二に突きつける、しかし玲二は身じろぎもしない。
武の構えはまるで映画ヒーローみたいな構えだった。
それでは実際5M先の標的も命中できまい。
(こいつ二挺拳銃みたいな無茶してそうだな)
相手が相手だったこともあるが、これまで武がまるで戦果をあげられなかったのも無理はなかった。
「わかった上でやっているのか?」
「ああ・・・」

乾ききった震える声で応じる武、尊人たちは一歩も動けない。
これまでとは話が違う、今度こそ自分たちは最後の一線を越えてしまうのだ。
しかもいわば無抵抗の相手を・・・。
「わからないのか?純夏に手を出した時点であんたはもう俺たちに宣戦布告しているんだ!」
「だから俺を殺すのか?短絡的だな」
「あんたのような存在は・・・無用に争いを撒き散らす、だから死んでくれ」
確かに玲二の言い分にも一理ある、自分もどこかで歯車が狂っていれば同じ道を辿ったに違いない、
しかし武は思う、力のあるものがその力を思うがままに振るってもいいのだろうかと?
否であろう、武にとって玲二はそんな危険な存在に思えた。

「それにあんたの情報だけじゃケルヴァンが荷担しているっていう決定的な証拠にはならないんだよ」
確かにそれもそうだが、あまりにも好意的な見方だった、人は信じたいものを信じるのである。
「純夏を必ず助けてくれるとあいつは約束してくれている、戦う力も与えてくれた!」
純夏の存在がなければもっと冷静に話し合うことが出来ただろうに・・・。
少し離れた場所で二人のやり取りを見ていた冥夜は尊人に耳打ちする。
慧は動かない。
「そろそろ止めるぞ・・・万が一もありうる」

「だから俺はケルヴァンを信じる」
武は玲二から見ればなっちゃないとしか思えぬ体勢で改めて銃を構えている。
「できるのか?お前に・・・」
玲二の瞳が武を見据える。
「できる・・・俺は仲間を友達を守るためなら何だってできる!!」
「無理するな、お前に殺しは出来ない」
こいつもそうだ、強いやつはいつでも同じようなことを言う。
武はあのいけ好かない探偵を思い出していた。
「それにそれだけじゃないだろう?お前は憎しみと手に入れた力を使いたいという気持ちが先走っている・・・
 それを仲間のためだの友達のためだのと転嫁してるだけだ」
「お前らがこれから」
玲二は巨大ロボを見つめる。
「何をするのかは知らないが、憎しみの力を振るうことで、もしかすると今のお前と同じ存在を
 何人も作ることになるかも知れないんだぞ?お前に背負えるのか?」

「もしお前が本当にそれでも正しいというのなら・・・これから先自分が行うであろう
 全てに責任が取れるのなら」

「俺を撃て」

あまりにもむごい質問だった。
それは玲二のような境遇だからこそ言えるのであって、自分の周囲で精一杯な一介の学生には
あまりにも荷が重すぎた。
「馬鹿にするなぁ!!」
そしてついに武の心のヒューズが飛んだ。
「やめよ!!」
冥夜の声とトリガーを引くのは同時だった、
破裂音と同時に銃弾は玲二の肩をほんの少しだけ掠めて彼方へと飛んでいった。
初心者にシングルアクションは無理な話だった。
頬にわずかに飛び散った血に武は金縛りにあったように動けない。
玲二の体から流れる血・・・それが初めての戦果…しかし喜びはなかった。 
「わかったか・・・・憎しみだけじゃだめなんだ」
確信めいた言葉で玲二はその場から一歩も動かず淡々と言葉を吐いた。
あたらないとわかっていて・・・卑怯だなと思いながら。

「おいゲンハ!行けるか?」
「なおと・・・世話ぁかけるなぁ」
「俺じゃない、俺たちだろうが、自分で言ったろ?」
青白い顔のゲンハを担ぎ離脱しようとする直人だったが、そのとき頬を掠める弾丸
ファントムか!?
あわてて左右を見渡す直人、見ると学生服の男が拳銃を持っている。
ファントムでない安堵に胸をなでおろす直人だが、次の瞬間踊らされた怒りが込み上げてくる。
反射的に直人はシグを抜き放つ
「あの野郎・・・置き土産だ!受け取れ!」
銃声がまた木霊した。

「憎しみで・・・何が悪い」
武はまた銃を構える、ここで初めて慧が動こうとする、その時だった。
「危ない!!」
風切る音に玲二がいち早く反応する、狙撃だ!
縛られてた縄を振りほどき・・・(縛られて30秒後にはもう解けていた)
武を突き飛ばし覆い被さる玲二、それを驚きの表情でみやる武。
(何でだ!なぜ俺をかばおうとした、殺そうとしていたんだぞ!!)
だが悲鳴は別の個所からあがった。
「鎧衣!?」
本来武の頭に命中するはずだった弾丸は玲二が突き倒したお陰でねらいが外れ
そしてそれは背後のバルジャーノンに命中し跳ね返り、尊人の足に命中したのだった。

「尊人ぉ!!」
苦しみ暴れる尊人に駆け寄る武、玲二はすばやく銃を拾うと何発か打ち返す。
「どけっ!!」
反撃を終えた玲二が武を突き飛ばすようにして尊人の傷を確認する。
傷は太ももの付け根・・・出血がかなりひどい・・・。
「まずいな、おい運ぶぞ」
「あんたの指図は」
その前に武は殴り飛ばされていた。
「お前は言ったよな?仲間を、友達を守るために戦うんだろうが!!うろたえるな!」
その言葉ににらみ返す武だが、相手にするなという冥夜の言葉に従い
そのまま尊人を背負って建物の中に入っていった。

それを追いかける玲二に慧がそっと声をかける。
「こんなときに言うことじゃないけど、縄、最初から解けていた」
ほうと玲二が賞賛の息を吐く、この子なかなかの観察眼だ。
「それに殺されそうになったのにそれでも白銀を庇おうとしてくれた」
「名前?教えて」
「吾妻だ、吾妻玲二」
「鑑を巻き込んだのは許せないけど・・・それでも吾妻を少しだけ信じても・・・いい」

その言葉で少しだけ救われたような気がした。

【白銀 武 マブラヴ age ○ サブマシンガン、ハンドガン、共に残弾0 招 】
(彼が作中で使用したのは玲二から取り上げた銃です)
【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【鎧衣 尊人 マブラヴ age △(重症) ハンドガン(装填数 20発) 狩 】
【綾峰 慧 マブラヴ age ○ 弓 矢残り7本 狩 】

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、失明、瀕死)
 所持品:なし(玲二が回収)】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル 鉄パイプ・包丁】
 (すでに逃走しています)
【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明)】 

  (コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグルx2 火炎瓶x3)
(これらの所持品は現在武らが所持)



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