仇敵






「と。言うわけで君と組みたいんだよ」
「正気ですか? 林檎さん」
「正気だとも。マナー君」

普通なら希望にあふれている。そんなさわやかな森の中、二人は向かい合っていた。常人なら発狂しそうなオーラがあたりを包み込む。
「……理由は? 何故、犬猿の仲の僕と?」
緊張を持続させながらマナーは聞いた。
「簡単なことだよ。君と私は似ている。このゲームは黒い奴が有利だからな」
あまりにも明快な答えに眩暈に似た感じをかくせない。
確かにチャットリンチ(マナーの一方的な思い込み)事件以来、腹黒さという点においてだけ林檎を認めていた。
自分も銃が武器なだけに二人揃えば鬼に金棒。共闘する、その考えが頭の中を駆け巡る。だが、裏切りの可能性も消えない。

やがて一つの案が生まれた。

「林檎さん。ここらへんですっきりしませんか」
「すっきりとは?」
「あなたとはあの事件以来ロクに討論しなかった。いやお互い避けていた。溜まってるもの、ぶつけ合いませんか」
その考えに林檎はいかにも悪役風の笑いを浮かべた後、
「じゃあ、やろうか」
承諾した。

「「せーの」」

「チャットに引きこもるな、チキン」
「HPに逃げるな、ガキ」

暫し、向かい合う。
そして、笑いあった。

「もっと早くにやっとけば良かったですね」
「ああ、馬鹿みたいだな」
日に照らされて、二人の男が笑う。ひどく滑稽な図だが、その笑い顔は心を打ち解けあった者だけができる。そんな笑いだった。

「すいません。もう一回だけやっていいですか?」
「ふふ、年下の願いは聞かないとね」
「ありがとう、先輩」
「実は俺もやりたかったんだ、後輩」
更に笑いあう。

「じゃあ、いきますよ」
「いくぞ!」

「「せーの」」

「死ねやぁ!! 駄コテ!!」
「くだばれ!! 工房!!」

銃声があざけり笑う。

結局、人間そう簡単には変われない。

【7番 林檎死亡 14番 マナー死亡】
【残り28人】




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