冷徹になれなかった者
「ハァ?」
支給された武器を見るなりわたしの口からは疑問の声が漏れた。
武器といえばナイフ、銃なんかが妥当なセンなのに、あたしに支給された武器は単なる―――――
「金槌ぃ?」
そう、金槌である。
しかもご丁寧に大、中、小と用意されている。
「こんなものもらっても何の役にも立たないんだけど…」
あたしは悪態をつきながらも重みのある中の金槌を手に取る。
「投げれば当たるかな?」
視界には金髪の少女…手には機関銃を携えているが、あたしの存在には気付いていない。
相手方に殺意はある…正当防衛…そう、これはあたし自身を守る正当防衛なのだ。
金槌を握る手に力がこもる…
ボールを投げる要領で、金槌を少女めがけて投げ放つ。
「きゃ!」
―――――当たった。
金槌は弧を描き、少女の頭部に食らいついた。
あたしは残りふたつの金槌を持ち、少女の元へ駆け寄る。
少女にトドメをさすために…
「何やってるんだろあたし…」
目の前には頭からの出血で血まみれになりながら涙をポロポロ流している少女の姿があった。
手を必死に動かし、落とした機関銃を探している。
「あ…うぅ……お母さん…往人さん…どこ?どこにいるの? 見えない…なにも見えないよぉ…」
多分、視神経をやられたのだろう…。
あたしがやったんだ…。あたしが…この少女から光を奪ったんだ。
もう耐えられなかった。
結局あたしは少女を担いで歩き出し、途中で見つけた木の洞に隠れることにした。
あたしには…人を殺すことなんてできない…
たとえ、和樹のためであったとしても。
【高瀬瑞希 支給武器・金槌 大・中・小】
【神尾観鈴 負傷、失明】
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