診療所で一休み
息を切らしながら、診療所待合室にある椅子に腰掛ける2人。
双方、体力には自信があるほうである。でも、今回は闘った相手が悪い。
何せビームを放つ相手だ、似たような相手(ハーブ)と闘った事がある乱馬はいざ知らず、
唯の(?)執事であるハヤテにはきつ過ぎた。
「ハァハァ、……なんて辛い事件なんでしょうか……
宮本さんは僕を助けるために飛び出してきて、ぼく達のために死んでいったんですね」
「悔やんでもしょうがねぇだろーが。それより、あの野郎は絶対ぶち殺してやる」
乱馬が闘志を燃やす。
「そうは言っても、相手はあの化け物ですよ」
肩で息をしながら、ハヤテが答える。その喋り方に『使○』と言った著作権考慮の気配は無い。
もはや、そんな気力も無いのだろう。
「勝ち目はあるんですか?」
「あぁ、あるぜ」
と言って、乱馬はバックを下ろす。
ズシリと重いそのバックは人一人分の重さがありそうだ。
「なんで、そんな重いもの背負ってたんですか? 下ろせばもっと楽に闘えたでしょう」
「そんな暇なかったんだよ。それにあんな化け物がいるとは思ってなかったしな」
「でも、そのせいで宮本さんは、宮本さんは死んだんですよ!」
「悪いとは思ってるけどよ……」
途端に空気が悪くなる。
シーン
2人の間に沈黙が流れた。
最初に口を開いたのはハヤテである。
「スイマセン、少し言い過ぎました」
乱馬より遥かに社交性に優れた少年は、何よりこの雰囲気を改善しようと考えたのである。
「乱馬さん。僕ら協力できませんかね、2人とも共通の目的を持ってますし」
「共通の目的って何だよ?」
「宮本さんの敵討ちです!」
「勝てねぇかも知れねぇぜ、重しをとってもスピードが上がるだけだしな」
「僕も一緒に闘います」
「足手まといはいらないぜ。大体、お前知り合いは探さなくていいのか? 俺も探す奴が一人いるしな」
「もちろん、探すべき人はいます。でも、敵を探しながらでも、人探しは出来ます」
「でも、足手まといはいらねぇ。ジジィの仇は俺が一人で討つ。」
話をしていたら、体力が回復してきたらしい。
乱馬は立ち上がり、診療所を後にしようとする。
診療所で薬を求めていたサムライはもういないのだ、だから長居する必要はない。
「待ってください、せめて荷物の確認ぐらいしていきませんか?
あれだけ重たい荷物だったんです、きっと役に立ちますよ」
「役に立つとは思えねぇけどな。ま、それぐらいならいっか」
何とか、乱馬の足止めに成功したハヤテは乱馬の許可を取り、彼のバッグを開ける。
そこから出てきたのは、銃弾。それも何種類もある銃弾。それと、一枚の紙だった。
「えーっと、説明書によると銃火器の予備弾みたいですね」
この島にある全ての銃火器の予備弾が、乱馬の支給品らしい。
その数量は数え切れないほどある。そりゃ、重いわけだ。
「これは、凄い支給品ですよ!」
「なんでだよ?」
「だって、さっきのビーム男にこれを投げつければ暴発してビーム男にも凄いダメージ
を与えられます。また、銃火器を持っている人は弾も欲しがるはずなので、仲間を
集めるときの交渉がし易くなるんですよ」
「へぇ、そりゃ凄いじゃねーか。んじゃ、それお前にやるよ。じゃーな、また会おうぜ!」
再び、診療所を出ようとする乱馬。
「いや、待ってくださいって。僕はまだほとんど歩けないですし……」
疲労がたまり過ぎて、自分では満足に動けないハヤテ。
「何だお前、面倒見て欲しいのか? なら、そう言やいいのに。
ま、一緒にいてやってもいいけど、荷物は代わりに持ってくれよ。
重たくてしょーがなかったんだ」
「アナタは、この僕にさらに重労働をさせるつもりですか……」
「まーな、その程度の重労働、命には代えられないだろ?」
「どういう意味ですか?」
「今度、アイツに出会ったら俺は本気で闘わなくちゃならねぇ。
だから、体は軽くしておきたいんだ」
「なるほど、そうですか……」
ハヤテにとって、この場に放置されると言う危機は去った。
だが、体力が回復した暁にはジュラルミンケースと銃弾全部と言う重しが加わる。
体力には自信があるので、大丈夫だろうが……。
まぁ、これも執事の仕事ですかね。
「ところで、話は変わりますけど。僕たちまだ自己紹介していませんでしたね。
僕は綾崎ハヤテと申します、乱馬さんの名前は?」
「俺は早乙女乱馬。無差別格闘早乙女流の二代目だ」
「格闘技の使い手ですか、それは素晴らしいですね。
僕は三千院家の執事をやっています。体力にはそこそこ自信があるんですが、
乱馬さんみたいに戦闘力は高くないですね」
先ほどの戦闘で見た乱馬の能力は確かである。
一緒にいて損はないし、人助けをしてくれた人間ならナギの側にいても安心できると言うものだ。
「とりあえず、体力が回復するまでここにいましょう」
「そうだな」
ハヤテはまだ疲れている。
歩けるようになり、30kg近い重しを背負っても移動できるようになるまで
一時間ほど休憩が必要になりそうだ。
【Iー7 沖木島診療所/5時間後】
【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]体力消費微小、悲しみ、男
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)
[思考]1、体を休める
2、あかねを捜す
3、武蔵の仇を討つ
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]体力消費大(自分では動けない)、悲しみ
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分、一億円入りジュラルミンケース)、銃弾一式(2〜30kg)
[思考]1、体を休める
2、ナギ・ヒナギクの安全を確保
3、できれば武蔵の仇を討ちたい
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