希望を呼ぶ一太刀






鈴子は当ても無いまま彷徨っていた。
その姿はまるで魂の抜けた人形のようであった。

自分の無力さ、周囲の残酷さを感じた鈴子の心は極限状態に陥っていた。
普段の彼女だったら、冷静に物事を考えることが出来るのだろうが、
今の彼女にはそんなことを考える余裕も無くなっていた。

彼女自身は意識はしていなかったのだろうが、鬼丸から渡されていたクレイモア地雷を持っていた。
仮に、彼女がクレイモア地雷をそのままにしておけば、鬼丸からは解放されていたことだろう。

しかし、彼女はクレイモア地雷を持つことで進んで鬼丸の僕になってしまったのだ。
また、彼女の命は鬼丸に握られている。鬼丸から解放されるには彼の望みを叶えるしかない。

(私は何をしているんだろう。今度鬼丸に会う前に刀を手に入れないと私が殺される。
しかし、刀を手に入れるにはどうすればいいんだろう。怖い。どうすればいいの?)

そんな中、第1回の放送が流れた。しかし、彼女にとってはどうでも良いことであった。
単に人が死んだ。それだけだ。
もしも、自分が殺されることになっても、特に何も思わないだろう。

そんな中、黒い影が疾風のように鈴子めがけて飛んできた。
鈴子が言葉を発する暇も無く、彼女は黒い姿をした獣に掴まれた。
彼女が獣を見たとき、獣は右手にデイバックを持っていた。つまり、この獣は参加者の一人らしい。

「へっへっへ。うまそうな女だな。」

黒い獣は言った。そう、獣は自分を食べるために捕まえたのだ。
しかし、今の彼女にとって、この獣に食べられるということは救いのような気がしていた。

(ああ、私はこの獣に食べられるんだ。でも、これで解放される....。)

「何だか悟ったような顔をしているな。そんな顔を見るとちょっと味気ねえな。
しかし、肉はうまそうだぜ。さて、味見をさせてもらうか。」

獣は鈴子の左腕から肉をそぎ取った。不思議なことに痛みは感じなかった。
それを獣は自分の口へ持っていき、食べた。

「さっきみたいな不味い肉じゃなくて、上物だぜ。ちょっと味気なさそうだが、
それじゃ、いただくとするか!」

しかし、その言葉を聞いた鈴子は理性を取り戻した。

「いやー!!!食べられたくない!誰か助けて!」

「そう、それだ。おまえの絶望感がうまみを増すんだ。もっと泣け、わめけ、叫べ!」
そう言いながら、獣は鈴子を食べようとした。

その時、獣の動きが一瞬止まった。獣の見ている先には銀髪の青年が佇んでいた。
なんて綺麗な人なんだろうと鈴子は思った。

「てめえ何者だ?てめえ妖怪だな。てめえもこの女を食いに来たのか。
残念だったな、この女は俺の...痛ってえ!」

獣が言い終わるか終わらないかの間に獣の左腕が切断されていた。
それは鈴子を掴んでいた方の手であった。獣の腕が切断されたことにより、鈴子は解放された。

(もしかするとこの人は私を助けてくれたの?)

青年の左手には木刀が握られている。信じられないことだが木刀でこの獣の腕を切断したらしい。

「てめえ、許さねえぞ。この紅煉様に対してこんな事をしてただで済むと...ぐあ!」

今後は紅煉と名乗る獣の胴が切れていた。しかし、先ほどと比べてあまり切れていないようだった。

「あぶねえな。もしもこのデイバックが無かったら、完全にまっぷたつになるところだったぜ。」

そう紅煉は言うとデイバックを取り出した。確かにデイバックには刀で切った跡があり、
その隙間から何か石の板のような物が見えている。その石の板には変わった文字と
子供の姿のような物が見えている。

「...てめえ、すかした顔をしやがって、これでもくらいやがれ!」

紅煉はそう言うと炎を青年に向けてはき出した。しかし、信じられないことだが青年は
その炎を木刀で一刀両断した。

(すごい。この人)

「逃げるな女。てめえも喰らいやがれ!」

今度は鈴子に向けて炎をはき出した。しかし、鈴子に当たる寸前、青年が炎を一刀両断してしまった。
まるで鈴子を守っているように。

「何だと!こうなったら、てめえらまとめて超特大の雷で消し飛ばしてやるぜ!」
紅煉のまわりに雷が集まってくる。あんなものが直撃したら、鈴子や青年は一瞬で消滅してしまうだろう。

鈴子が最後を覚悟したとき、青年は鈴子にそう言った。

「逃げろ」

鈴子は青年の言葉を聞いて、自分の考えに確信を持った。
(さっきもそうだったけど、この人私を助けてくれているんだ)

青年の言葉を聞いた鈴子は、急いで2人から離れる。

「あばよ!」

紅煉は青年に向けて、超特大の雷を発射した。雷は青年の体に直撃した。
青年の体には紅煉の放った雷で煙のような物が出ているようだった。

「へっ、ざま無いな。えっ、何だと!」

しかし、青年は雷が当たる直前に紅煉の右足を切断していた。
一方、青年の方は倒れていない。むしろ紅煉に向けてもう一太刀浴びせかけようとしている感じだった。
紅煉は青年に対して恐怖を感じた。

「・・・ちくしょう!覚えていろよ!今度はおまえとその女をまとめて喰ってやる!」

紅煉はそう言うとデイバックと左腕、右足を抱えて飛び去っていった。

紅煉が飛び去っていくのを見て、鈴子は青年にこういった。

「ありがとう。助かりました。」

しかし、その言葉を聞くか聞かないうちに青年は倒れ込んでしまった。
よく見ると全身にひどい火傷があった。さっきの紅煉の雷が青年にダメージを与えていたのだ。

(この人は私を助けてくれた。今度は私がこの人を助けなきゃ!)

鈴子は自分の支給品から、包帯や消毒液を取り出して青年の手当を行った。
とりあえず、青年は無事のようだ。

(これで何とか大丈夫だと思うわ。それにしてもこの人は何者なんだろう。
この人さえいえれば、私は鬼丸も怖くないし、自分も信じていられる。
そうするとこのクレイモア地雷を何とかしないといけないわ)

鈴子は横たわる青年を見ながらそう思った。

【C-4 鎌石村の道路/放送から2時間経過】
【鈴子・ジェラード@うえきの法則】
[状態]左腕負傷。治療済み。精神状態はほぼ回復。
[装備]ナースキャップ
[荷物]荷物一式(食料二日分&水一日半分)、クレイモア地雷(遠隔起爆モード)×1
   なりきりナース医療セット(包帯、消毒液、注射器数本、輸血パック、ナースの制服)
[思考]1.殺生丸の回復
   2.クレイモア地雷に対する対処

【紅煉@うしおととら】
[状態]:左腕、右足切断、胴体一部切断。現在回復中。
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(食料&水:4日分) 石版(ガッシュ)@金色のガッシュ
[思考]:1.とにかく殺しまくる(旨いやつ優先)
    2.ゲームに優勝する
    3.殺生丸と鈴子に復讐する

【殺生丸@犬夜叉】
[状態]全身火傷。現在回復中
[装備]木刀・正宗@ハヤテのごとく
[荷物]荷物一式(食料・水四日分)
[思考]1.気絶中

※紅煉、殺生丸の傷は時間がたてば再生します。
※ガッシュは石版に封じ込められています。
※ガッシュを石版から解放するためには石版全体を月の光(メドルウの代わり)に当てる必要があります。



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