島の外
「全く、どうして私がこんな事件に巻き込まれなきゃならないのよ。
よく見ればギンタンもいるみたいだし、全く困った事になったわねぇ」
こんな事件に巻き込まれるのはマッピラごめんだ。
ドロシーには逃げ出すあてがある。だから、さっさとこんな世界からは抜け出して元の生活に戻りたい。
逃げ出すあてを説明するとこうなる。まず、これだけの人間を様々な世界から一堂に集めたのだから、その方法はディメンジョンARMしかない。
ディメンジョンARMを使って(いや、それ以外のどんな未知の力でも)、このようなゲームを開催する方法は大きく分けて三つある。
・自分もこの世界にやってくる。
・自分は別の世界にいて監視をしている。
・自分は別の世界にいてただ結果を待つのみ。
三番目はあり得ない。あの女自身が部下を使って監視している事を仄めかしていた。
とすれば、残るのは一・二番のケースしかなく、ここでも女の部下について考えれば面白い事が分かる。
『彼等はゲーム内を飛び回ることもありますが、なるべく殺したりはしないほうが良いです。死にたいなら話は別ですが』
あの女の言葉だ。これが何を意味するのかは簡単である。
あの女は暗に、この世界は監視する必要があるほど脆い一面を持っていると漏らしてしまったのだ。
参加者たちのとる『ある行動』がこの遊びの崩壊につながる。でなければ、監視などする必要も無い。
そして、その『ある行動』とは恐らく島からの脱出だろう。海が禁止エリアだというのも、あの女が言った言葉だ。
冷静に考えれば島外への脱出はゲーム進行の妨げには全くならない。
仮にある参加者が島外へ脱出したとしたら、その参加者は24時間以内に他の参加者を見つける事が困難になり結果自滅する。
正しい順序としてはあの女の部下を何とかして、次に脱出である。
これが逆転するとしたら、島外に女の部下を何とかしてくれる能力を持つ者がいるケースだが、あの女の知人はともかくとして、
女を知らない人間は、島の外に出て、仕組みの分からない部下を何とかするという危険な行動を取るとは考えにくい。
結局のところ、島の外へ逃げ出す事はデメリットが大きいだけで参加者の得にはならないのである。
なのになぜか、島外が禁止エリアとなっている。考えられる理由は、ゲームを崩壊させる何かが島の外にあるのだ。
「私って天才! ちょっと考えただけでこれだけの事が分かるなんて」
元々、魔女ドロシーはARMに関する深い知識を持っている。そのため、今回のように知らない内にどこか遠くへ飛ばされている。
というケースにも冷静に対応する事が出来る。けれど、そんな彼女にもあの女の部下に関する知識はゼロだった。
「こっちも考えないとね。まずは部下に関する情報集めね。ギンタンはその後。
待っててねギンタン。必ず私が助け出してあげるから」
【G-5(中央) 道/早朝】
【ドロシー@メル】
[状態]健康
[装備]なし
[荷物]荷物一式(食料&水二日分)、支給品不明(本人確認済み)
[思考]1.女の部下(ヒヨウ)に関する情報集め。
2.虎水ギンタの捜索。
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