殺人ゲーム開始






―――― 借金執事は森にいた。

(ここの位置は多分、南西の端。中心までは約5キロ…。)
彼は荷物と自分の位置を確認していた。

  あの女性が殺し合いを僕らに宣告すると、当然多くの人が動揺した。
  すると…。一匹の金色の…なんだろう。
  「妖怪」とか「魔物」とかの言葉がぴったり似合うような獣が、いきなり雷を放った。
  その雷は見えない壁を突き抜けて部屋に炸裂したけど、あの女性は無傷だった。
  その直後…その金色の獣はいきなり苦しみだした。
  まるでいきなり心臓発作が起こったみたいに…。
  そういえば…その時、中学生ぐらいの男の子が『とら!!』と叫んでいるのが聞こえた気がする。
  あの金色の獣は「とら」というんだろうか…。

  気がつくと、何かが中を舞っていた。
  それは僕たちのいる部屋にも入り込んできたので、僕はその何かをよく見ることになってしまった。
  その形は…例えるとしたら「尻尾の生えた目玉」。そうとしか言いようがない。
  あまりにもえげつないその外見に、まるで北海道にいるような寒気がした。
  『あなたたちの心臓には、この妖が憑り付いています。』
  ……訂正。北極にいるような寒気がした。
  『私の言う事に従えない時は…それらが胸の中で暴れまわることになるでしょう。』
  ……なんだか冥王星に不時着した気分になった。
  ちらりと先ほど苦しんでいた獣を見ると、
  荒い息をついているが死んではいなかったので、少しほっとした。

そして、いくつかこの殺し合いの『ルール』が説明された。
主なものとしては、
『最後まで生き残った一人のみが帰れる』
『参加者には武器や食料が支給される』
『飛び回っている妖をあまり殺してはいけない』
『指定された場所に立ち入ってはいけない』
あの目玉ジャクシ(と呼ぼう)は、殺し合いの邪魔にならないように
空中の高いところを飛んでいるようだ。

デイパックの中から名簿を取り出して眺めてみる。
1行に4人ずつ名前が書かれてあり、上から12行目に自分の名前を見つけた。

【綾崎ハヤテ 三千院ナギ タマ 桂ヒナギク】

(ヒナギクさんも!?)
何ということだ。
お嬢様やヒナギクさんのような、か弱…くはないけれど、
それでも一般…でもないか…の女の子まで…。
(どうにかして…このゲームを止めなければ、
 お嬢様やヒナギクさん…そして他の人たちの命が!)
しかし、この名簿…一行ごとに出身地が違うのだろうか?
12行目の4人は自分の住んでいる近くの人々
1番下の行の4人は多分外国人だ。(「ギンタ」は微妙だが…)
そして 【毛利蘭 毛利小五郎】【高槻涼  高槻巌】 のように、
兄弟(もしくは家族?)のような関係の人もいるらしい。
ということは…世界中のバラバラな地域から4人ずつ集められたのかもしれない。
(それにしてはやけに日本人が多いような…
 いや、細かいことは気にしないでおこう。一刻も早く二人を助けないと!)
そして彼は、己の武器をデイパックから取り出した。
「こ…これは…」


かつて異国から日本に持ち込まれた『それ』
銛のような形状で、つき刺すために持ち込まれた『それ』は、凄まじい速度で日本に広がった
その名前は…。
【殺人ゲームが開始しました】

【アドベンチャーランド・シアターオーリンズの南西の森/早朝】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]:健康
[装備]:フォーク
[道具]:荷物一式(食料&水:2日分) 借金
[思考]:1.ナギ・ヒナギクを探す
    2.襲われている人がいたら助ける
    3.ゲームを止める



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