OP
彼らは、暗闇の中にいた。
薄暗い光こそあれ、お互いの姿も認識できない。
まったく見覚えのない場所にいることに戸惑いながらも、何名かが動き出した。
「諸君、静粛にしたまえ!」
その直後に響いた声に、彼らの視線が一点を集中する。
燦然と輝くスポットライトの下、彼はいた。
「我が名はゼロ!!」
漆黒の衣装と仮面に身を包んだ人物は、自らを誇示するように名乗った。
「諸君は選ばれた! この私の同志となるチャンスを得る聖戦に!」
誰もが戸惑う中、ゼロと名乗った男は言葉を止めず続ける。
「私の同志として生きるため、諸君には殺し合いをしてもらう!」
殺し合い。
その単語にざわめきは頂点に達する。
同時に、暗闇の中で何かが光り輝く。
「神の裁きを!!」
女性らしき声と同時に、巨大なレーザーが生み出される。
それは一直線にゼロに向かい、飲み込むのは時間の問題だった。
だが、ゼロの姿は消える……否、覆い隠された。
それ以上に巨大な白の甲冑によって。
「!?」
巨大なレーザー……甲冑の前ではちっぽけなそれは、白兜の放つハドロン砲によって霧散する。
ハドロン砲の着弾した衝撃に吹き飛ばされた女性は、血まみれのまま動かなくなった。
あれほどの爆撃の影響を受けたのは、彼女一人。
その異様さに、誰もが口を閉じる。
「ランスロット・アルビオン。私を守る忠実なるナイトだ」
逆らった女性に目もくれず、黒衣の男は言葉を紡ぐ。
「ルールを説明しよう!
諸君には私が用意した会場で殺し合いをしてもらう!
なお、全ての武器は没収させてもらった。
最低限の食料や水などの必需品は持たせよう。
殺すべき相手の名簿も、不完全な品だが渡すこととしよう。
だが、自身の位置を示す地図も、身を守る武器も渡すことはできない!
代わりに、会場には様々なアイテムを用意しておいた。
異能の使い手すらも凌駕する品か、まるで役に立たぬゴミか……真の強者ならば運すらも掴み取れ!
そして、開始から6時間ごとに放送を行う。
放送の内容は、6時間中の使者の発表と禁止エリアの指定についてだ。
……そうだな、ここで首輪の説明をするとしよう」
首輪の単語に、何名かが悲鳴をあげる。
おそらく、今まで気がつかなかった首の違和感に驚いたのだろう。
「その首輪……大きさや形状に違いはあるかもしれないが、それは命を奪う力を持つ。
言葉で説明するより、実践する方が良いだろう」
そう言って、ゼロは手に持ったスイッチを押した。
ボンッ
そんな小さな爆発が、あの逆らった女性の居た場所から起きた。
スポットライトの当てられた中、女性の首は宙に舞う。
ゴロンと床に転がった首に、誰もが言葉を失う。
「禁止エリアとは、進入した者の首輪を爆破させるエリアだ。
誤って進入しても多少の猶予は与えよう。そんなくだらないことで命は失いたくないだろう?
……それと、あの程度の爆発では死ぬことはない、もしくは、首を飛ばされても死なない。
そんな甘い思想を持つ者がいるなら、その考えは捨てたほうがいい。
首輪の爆破は絶対の死をもたらす。何者にも……神ですら覆せない!
たとえ生命を蘇らせる技術を知っていても同様だ。
会場での死は絶対。死者を蘇らせる方法はないと思え!」
シンと静まり返る中、一度言葉を切ってゼロは再び言葉を紡ぐ。
「これは無いと信じたいが、24時間死亡者が出なかった場合……全員の首輪を爆破する。
私と歩むに値しなかった。そう判断させてもらう。
だが、最後の一人……この聖戦の優勝者には莫大な褒美を与えよう。
このランスロットをも上回る力、誰も目にしたこともない財宝、そして絶対の法則を覆す、死者の蘇生すらも私には可能だ!
私と共に歩むとはそういうことだ! 全てを手にする権利を得ることだ!
さぁ、始めよう諸君!
今から歩むナイトメアを乗り越え、再び我が前に戻ってくるがいい!!」
その言葉を最後に、真の静寂が訪れた。
無数に居た人々も、ランスロットも、ゼロの姿すらも消え失せる。
まるで、今までの全てが悪夢であったかのように。
唯一つ、もの言わぬ女性の死体を除いて。
【ヲーグ(ワイズ)@ブルーブレイカーシリーズ 死亡確認】
―――聖戦(バトルロワイアル)、開幕―――
前話
目次
次話