ちょっと待って マリィちゃん
バトルロワイアルという戦場の中――。
がっちりとした体の青年に守られるように、幼い少女がいた。
悟空とドラゴンレーダーを見ながらなにやら相談しているのはマリィ。
出身はジャングルの小さな村。名字は普段名乗る習慣がないのでわからない。
もしかしたら最初から存在すらしないのかもしれない。
彼女はなんの力も持たないやっと10歳になったぐらいの小さな女の子だ。
殺し合いなどという場では、すぐに死んでしまってもおかしくない。
まだ彼らは知らないことだが、この島には魔法使い、サイヤ人、ヒットマン、殺人中毒者などと危険人物がたくさんいる。
この島の他の場所で彼らの戦いによってもう実際に幾人も死者がでている。
そして、その中には同い年でとても仲が良かった彼女のクラスメイトの少女も含まれていた……。
そう、弱いものは死んでいく。ここは日常とは隔絶したバトルロワイアルなのだ。
しかし彼女はそんなバトルロワイアルにすでに完全に適応しきっていた。
なにせ、もうすでに一人殺しているのだから素晴らしい。
今は他人をできるだけ利用し、騙し、殺しながら、
さらにドラゴンボールでご褒美まで手に入れて帰ろうなどと思っているのだから頭が下がる。
彼女の特徴は適応性の高さとその思い込みの激しさゆえの暴走癖。
こんな場でいちいち現状に悩んだりはしない、ただつっぱしるだけだ。
もし、とある男の子がこの場にいたとしたら
『ちょ、マリィ!? 落ち着いて!
つーかなんだよバトルロワイアルっていきなり』
とかなんとかツッコミを入れてくれたのだろうが、残念ながら彼はここにいない。
――そう、彼がここにいないのだ。
彼女にはどうしてもここで生き残ってもとの世界に戻れなければいけなかった。
それは幼馴染で最近やっと彼氏彼女の関係になることができた男の子のため。
その男の子、ハレがいさえすれば別にこの島に骨をうずめたってよかった。
故郷から離れ、他と隔絶した空間というだけなら今までだってあったし、
その遭難した無人島でも本気でハレと子供をつくって新しい家庭をつくっていこうと思っていたのだから。
でもハレがここにいない。自分がハレから引き離されてしまった。
それは、殺し合いにのりどんな手段をつかってでもここから帰ろうとマリィが決心するのには充分な理由だったのだ。
■ ■ ■
ハレと……ハレと離れちゃったら――。
あたしの未来予想図(ハレの両親があたしのパパとママになってー、ハレがダーリンでー、子供は何人かしら、きゃっ☆)はどこにいくの!?
あたしがそばにいなかったらきっとハレはすぐに他の女にねとられちゃう。
ハレのまわりにはあたしよりも可愛い女の子たちがいっぱいあふれてるんだから。
でも、あたしはハレの心変わりを心配してるわけじゃないわ。
あたしが心配してるのはその女の子たちがハレに惚れちゃうこと。
あたしの彼のハレはみんなに優しくてとっても素敵な男の子だから、
ちょっと優しくされた女の子たちは勘違いしてすぐハレを好きになっちゃうの。
――だから、ちゃんとあたしが主張しなきゃいけない……!
ハレにはもう可愛い彼女がいるって事を! ハレの本妻はあたしだってことを!
なのに今あたしがいるのはハレから遠く離れたところ。
都会とジャングルで居場所が別れたこともあったけど、いつだってハレはあたしのもとに帰ってきてくれた。
だから今度はあたしがハレのもとに帰る番。
天国のパパとママ、ごめんなさい。あたしは人を殺してしまいました。
でもね、あたしは諦めたくなかったの。
戦う前から負ける気でいたら勝てるわけない。
そう、これは勝ち戦! あたしはこの殺し合いを乗り切ってハレのもとに帰るんだから!
それだけじゃない、このドラゴンボールの力でハレを夢中にする力を手に入れるの。
でも今のあたしはただの女の子だから……。
でもこれって考えようによっては大きな武器じゃない?
こんな子供が殺し合いにのってるなんてなかなか思わないもの。
だからとっておきの笑顔を見せよう。安心するような優しい言葉をいおう。
そして、その人が油断してるときを狙って殺してあげよう。
今は真夜中だったし、全力疾走を繰り返して体力は落ちているはずだったが疲れや眠気も気にならない。感じない。
この殺人ゲームに自ら乗って殺人を犯してしまった事による奇妙な高揚感にまるで酔っているかのようだ。
でも頭は至って冷静。悟空と話ながらも脳の中では様々な考えを次々に巡らせている。
(ちょっと話を聞いただけだけど、ゴクウってやっぱりかなり強いみたい)
ドラゴンレーダーの反応によるとまた1つがそれほど離れていない位置にあり、
そこへ行く前にお互いの情報交換をしていたのだが、いろいろと情報を手に入れることができた。
(気? カメハメハ? さいや人? よくわかんないけど……、でもあれを見ちゃったし)
気というものが何なのかわからなかったマリィに説明するために、
悟空は近くにあった岩にカメハメ波を撃ち込んで見事に砕いてみせたのだ。
一番重要なドラゴンボールの情報や、あの最初の間にいた大きなモンスター、シェンロンについて、
友人らしい気の力をつかえるヤムチャの話などなど悟空の話は本当に参考になることばかりだ。
雄一郎もそうだったが、無邪気な言葉と容姿をもつマリィにはいろいろと教えたくなるものらしい。
そうしてマリィは学習していく、頭をつかって考える。
戦闘能力を持たないながらもこのゲームでの優勝を目指すために。
【C-4 道路/一日目黎明】
【名前】孫悟空@ドラゴンボール
【状態】健康、クリリンの死に対するショック
【装備】なし
【持ち物】四星球@ドラゴンボール、ディパック(基本支給品一式、不明ランダム支給品0〜2)
【思考】
0:ドラゴンボールを六つ集めて主催者と勝負。
主催者を倒して殺し合いで死んだ人達を全員生き返らせる。
1:マリィと一緒にドラゴンボール集めをする。
※参戦時期はベジータとナッパが地球に来た頃です。
【名前】マリィ@ジャングルはいつもハレのちグゥ
【状態】健康
【持ち物】ディパック(基本支給品一式・水と食料が二人分)、ドラゴンレーダー、カビ取り洗剤、
超神水@ドラゴンボール(残量1/3程度)
【思考】
0:優勝を目指し、ドラゴンボールを六つ集めて主催者と勝負。
ハレが自分にだけ夢中になるようにしてもらう。
1:利用できる人は利用しながら、どんどん人を殺していく。
2:ゴクウと一緒にドラゴンボール集めをする。全部集めたらゴクウは用済み。
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