今日からバトルロワイアル






俺の名前は稲葉十吉34歳。職業はごく普通の営業サラリーマン。
得意なことはプリンの営業。
だが、少し前から俺は組織"コンビニ"のヒットマン2代目「二丁」となり、
サラリーマンとヒットマンの二重生活を送っている。

そして今日――。俺はまたとんでもないことに巻き込まれてしまったらしい。
賭朗という組織名は知らないが、あいつらは明らかに裏社会の組織の人間だ。
人を集めて殺し合いさせるだ? 前にあったあの裏ビデオの事件。
あいつらはレイプや殺人、人の死にいたる瞬間を収めたスナッフビデオを撮って
金持ちに売りさばいていた……。こいつらも十中八九似たようなやつらなんだろう。

攫ってきた人間同士を戦わせてカメラにおさめ、それを売りさばく、そんなところだろうな。
さっきの部屋にはどうみても一般人にしかみえない女子供もいたが、
あの子たちは殺される場面を撮るための生贄か?
悪趣味なことだ……。
ドラゴンボールとかいうのも、物を取り合いさせることで闘いになるのを誘ってるんだろ。

ここまで大掛かりなことをやるやつらなら、
参加者には金で雇われたやつや組織の人間が紛れ込んでるだろうな、きっと。
内側から扇動したり、積極的に殺人をすることで殺し合いを活発化させる。
いかにもありそうな話だ――。

まぁなんにせよ、丸めがねになんとか連絡を取って助けを呼べばなんとかなるはず……。
それまでなんとか生き延びてやる。俺は生きて美沙子のもとに帰るんだ。






「クソ、やっぱり携帯盗られてるか」




さすがに連絡手段を残しているなんて間抜けなことはなかった。
まずはどうにかして通信手段を見つけることが先決か。
とりあえず、このデイパックの中を見てみるかね。
いきなり携帯が入ってたりはしないだろうし、何か武器があれば御の字かな。
願わくば二丁変身セットや銃が在ればいいんだケド。

中に入っていた名簿には稲葉十吉の名前があった。
そして――その隣に俺が殺ったはずの蜂の巣ジョニーの名前。
あいつ死んでなかったのか……しかし、こいつといい、
透明人間のスケさん・マンイーター・説明好男・Q太郎といかにもやばそうな通り名があるな。
きっと姿も見せずに相手を殺るから透明人間とかそんなんだぞ。
だけど、二丁じゃなくて稲葉十吉のほうで載ってるってことは、
俺が二丁だって気づかれてないのか。


他の荷物で一番目立っていたのは大きな袋。
中身は……弾か、各種多用な銃弾がみっちりとつまってた。
そして、その横には俺愛用の銃、コルトがあった。こりゃついてるね。
奥に懐中電灯やら水やらのサバイバル用品に混じってあるのは電子辞書か?
まぁコルトがあって安心したよ〜。
さすがに武器ナシでやれとは言わないんだな。あいつらも。





「よくできたモデルガンやね。それ」


「あ、ホントだ。銃口見れば一発でわかる。これモデルガンだよ。
 って………っ!? いまのは誰だ?」


「グゥっス」


振り返るとそこには、なんつーかゲームとかアニメに出てくる妖精?
あれみたいな羽生やした小さな人間が浮いてたんだケド……これ俺どう対応したらいいワケ?
あ……あれ? これはさすがに想定外……。


「ほれ、人が名乗ったら自分も名乗るのが礼儀というもんよ」
「あ……ああ、俺の名前は稲葉十吉。」


とりあえず本名を名乗ってみる。
名簿に載っている以上偽名を使っても仕方ないし、二丁と名乗るのは状況を見てからだ。



「それよりも、君はいったいなんなんだ?」

――そう、それが何よりも聞きたい。






「ん?グゥはグゥだけど」
「いや……その……なんか小さくて羽があるんデスが」
「うむ、普段はこんなことないんだがな。どうやら制限とやらのせいで
 グゥはここじゃこんな小さな姿でしかいられないようね☆」




いや「ようね☆」って、それ本当だとしたらメチャクチャ大変なことじゃないか?
なんかカワイイポーズとってふわふわしてるケドさ。
さすがに、このゲームの主催が人間をこんな変な生き物に変える力を持っているとは信じがたい……、
信じがたいが、こいつロボットや人形のようにも見えないし。



ん? 変な生き物――ゲームの主催側にもおかしな生物がいた。大きな龍。
まさかこいつが主催側の可能性もアリ?

しかし、とりあえずいきなり襲ってくる気はないようだ。
変にゴネたら警戒してることがバレて探りを入れづらくなる。
油断させるのが先決。相手もまずどうこうする気はないようだし、分の悪い賭けじゃない。
俺は営業のプロ――まずは相手の情報を手に入れよう。







「そ、そうなんですか。大変ですね〜。グゥさんの知り合いとかここにいました?」
「ん? マリィにラーヤ、ダマ、あとマンイーターが呼ばれているようだな」
「マンイーター? なんか物騒なお名前ですケド。いったいどんな方なんでしょう?」
「あの子はペットみたいなもんよ。」

「ペット!?随分個性的なお名前ですね。犬ですか? 猫ですか?」
「しいていえば……猫?」
「ああ、俺も昔飼ってましたよ猫。かわいいですよねー。
 あの気まぐれなところがなんとも言えなくて」






◆ ◆ ◆

俺の名前は稲葉十吉。営業のための話術なら少し自身アリ。
この殺し合いの舞台でも出来れば話術で切り抜けたい――そんな34歳中年である。

(結局銃なかったしね)


【A-3 /一日目 深夜】

【名前】稲葉十吉@今日からヒットマン
【状態】健康
【持ち物】各種銃弾セット、コルトのモデルガン、最新式電子辞書、ディパック(基本支給品一式)
【思考】0:なんとか最後まで生き延びて生還する。そのためなら殺人も辞さない。
 1:グゥからできるだけ情報を引き出す。
 2:通信手段を見つけて、コンビニへ助けを呼ぶ。

【名前】グゥ@ハレグゥ
【状態】妖精化
【持ち物】ディパック(基本支給品一式、不明ランダム支給品1〜3)
【思考】
 1:なんか、質問ばっかしてくるやつやの。
 2:からかいがいのありそうなやついないかな。
 3:まぁ楽しむかね。

※グゥのいろいろと不条理な能力は制限によりほとんど使えなくなっています。
(例:タイムスリップ、体内王国、etc)
ただし、身体能力等は体が小さくても変わっていません。



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